ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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1.6.2006
「復刻」〜この時代の消費を刺激する要素として

この1〜2年、大正や昭和の味や包装を再現した飲料や菓子などの発売が相次ぎ、ちょっとした人気商品になっている。また、日本橋千疋屋では、昨年9月に総本店を新たに日本橋三井タワーにオープンしたのを契機に、同店が日本で初めて生み出したフルーツポンチを大正時代のレシピで復活させている。これは「フルーツポンチ クラシック」(1,050円)と名付けられ、当時と同じ7種のリキュールを使用し、元祖の味わいが再現されている。体験意欲をそそる企画であるが、三井タワーが新たな観光スポット(特に熟年の)になっていることも手伝って、この千疋屋総本店、なかなかの賑わいぶりである。

このように「復刻」が生活者の興味を刺激するテーマになっていることに気づくのだが、そんななかでカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の新たな取り組みも面白い。ここでは全国の千店舗に「おもひで映画館」と名付けた邦画作品のDVDコーナーを新設しているのである。これは中高年に向けたもので、石原裕次郎や吉永小百合が主演する昭和30年から40年代の作品を一挙に117タイトルも揃える内容になっている。そのなかには、例えば、三船俊郎と勝新太郎が競演した「座頭市と用心棒」や吉永小百合主演の「青い山脈」などの著名作品や、佐々部清監督が推薦する「下町の太陽」、「東京オリンピック」といった作品が見られる。

初期仕入れ費用を考えると、AVレンタル店の品揃えが高い回転率を期待できる新作や大作に偏るというのはよく理解できる。また、作品のDVD化の優先順位もそのことと連動している。そこで中高年が若かりし頃に観た作品の品揃えは薄くなる。また、中高年はレンタル店の主たる顧客ではないという認識がそのことに拍車をかけている。そんななかでのCCCのこの取り組みは、新たな顧客開発、つまり中高年顧客に新たなつき合い価値を提供するということでも注目される。

生活者にとって復刻というテーマには大別して二つの意味、受け止め方、感じ方がある。ひとつはファンタジックなモノ・コト探検の面白さであり、いまひとつは昔話をする楽しさである。それは前者が自分が物心がつく以前の時代、後者が物心がついて以降の時代、と分類することができる。どちらの受け止め方になるかはその人の年齢によるのだが、いずれにせよこうした遊びの心が消費につながるのである。基本的に満ち足りた時代が続くなかで、消費を刺激するポイントはどこにあるのか。復刻をテーマにする企画からその一端を嗅ぎ取ることができる。





 

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