ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
1.23.2006
メンズビューティーサロン〜商業施設に期待される次なる装置

NYの高級百貨店、サックス・フィフス・アベニューが7階のメンズファッション・フロアに新しく理髪店(140・)を導入している。このフロアの一画には、気兼ねなく試せるテイスティングバー付きのプレゼンテーションが素晴らしい、メンズフレグランスを種類豊富に集積する売場を展開しているのだが、理髪店はこれと連続性を持たせる形で、奥の窓際のゾーンに設けられている。

導入された理髪店は「ジョン・アラン(John Allan’s)」という、NYで今注目の男性専門サロンである。オーナーはサロンビジネスの世界で高名なジョン・アラン。彼の展開するサロン(マンハッタンに3店を展開)は、伝統的な理髪店と高級なサロンの環境ならびにビューティーサービスとを融合したところに特色がある。「ジョン・アラン」が提供するサービスメニューはボディマッサージ、フェイシャルトリートメントを含んで多岐にわたるのだが、サックス店では基本メニューに絞ったものになっている。つまり、マッサージングシャンプー、コンディショニングトリートメント、ヘアカット、マニキュア、靴磨きである。ちなみにこれらのサービスを受けるに要する時間はわずかに35分から45分。質の高い内容のサービスでありながら短時間であること。これは重要な価値である。

なお、サックスでは、サロン部分を閉鎖された環境で配置する一方、そのエントランスホールにあたるゾーンに「ジョン・アラン」が独自に企画開発したビューティー製品をフルラインで展開している。これはヘア、フェイス、シェイヴ、ボディの領域にわたって多彩なアイテムで構成されるものであるが、フレグランス売場とのつながりを持って展開することで、サロン利用客以外にも働きかけ、購買促進する意図を読み取れる。

これまで女性のためのビューティーサービス装置は導入しても、男性のためのものには見向きもしなかった百貨店が、今こうした取り組みを始めるというのは興味深いことである。同時に、サックスの試みには男のためのビューティーサービス装置の導入が百貨店やSCの新たなトレンドになることを予感させる。これを導入しているか否かがその百貨店やSCの感度を語る、と言っても大袈裟ではない時代の到来を直感する。





 

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