ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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6.12.2006
この夏のホットな履物、「クロックス」〜素足の心地よさを楽しむ

この夏、NYやLAでホットな履物になっているのが「クロックス(Crocs)」である。日本の首都圏の先端を行く品揃えをする雑貨店あたりでもちらほらと見られるこの商品、鮮やかで、きれいな17色のカラーバリエーションを持つ、カラフルな樹脂製サンダルである。コロラド州デンバーに本拠を置く、2002年創業のクロックス社によるもので、樹脂製の持つ遊び感覚の視覚的な印象からは想像できない、能書きのある多彩な効用を持つところに特色がある。

まず、同社が独自に開発した、分子と分子の間にまったく隙間のない分子構造を持つ「クロスライト材」を素材にしていることからくる特色。非常に軽い(168g)。体温によって柔らかくなるため履きやすく、またサポート力があり、脚の疲労度が大幅に軽減される。蒸れにくく、通気性に優れている。抗菌性・防臭性も持つ。手入れも簡単で、水洗いして拭くだけでいい。ストラップに工夫があること。これを踵側から前に倒せばスリップオンサダルとして履くことができ、踵で使用すればサポート力が高まり、車の運転もできる。こうした特色から、2005年には業界紙「フットウエアニュース」による「ブランド・オブ・ザ・イヤー賞」も受賞している。

「クロックス」(右)とノードストロムの婦人靴売場での壁面を利用した「クロックス」とフリップフラップの展開。

クロックス社では最初にこのサンダルを、ボートのデッキにキズを付けず、滑りにくいサンダルとしてフロリダのボートショウで売り出したのだが、それは用途のひとつを語っているに過ぎない。優れたサポート力と脚に負担の少ないという特色は旅行用途や看護師といった職業にもふさわしいことを示している。このようにその特色から様々な用途を想定することができるのだが、このサンダルには普通の生活者の普通の日常生活での使用を刺激する魅力がある。それは素足で履く心地よさに高い満足があるということだ。しかも、きれいな色、ユニークな形状という美的刺激もある。なお、子供物から男物までサイズ展開も豊富で、ファミリー単位での購買を促進する力もある。

素足で履く心地よさをテーマに大々的なMD提案を行い、そのなかで今年の顔となる訴求商品として、婦人靴売場と子供靴売場で「クロックス」をクローズアップしているのがノードストロムである。この店が紳士、婦人、子供、それぞれの靴について優れた品揃えと接客販売サービスを提供しているのはよく知られているが、靴の販売における第一人者とも言えるこの店が「クロックス」やフリップフラップ(ビーチサンダル様のサンダル)の展開に力を入れているのは興味深いことである。このように、素足の心地よさを満たす履物の訴求は夏の靴のMDに不可欠のポイントになっていくことを読み取ることができる。





 

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