ノーマ・カマリ。息の長い活動を続け、しばしば画期的なファッションを創造し、市場に大きな刺激を与えるニューヨークデザイナーである。彼女を有名にしたのが1969年に発表したホットパンツで、これは全米を席巻する大ヒットアイテムになった。まさにファッション史に残る仕事であるが、このカマリが次に創造した画期的なファッションが、80年代初めに発表した「スウェッツ」である。折しもニューヨークでは、エアロビックダンスやジョギングを中心に大エクササイズブームが到来しており、洗練されたボディファッションの性格を持つカマリの「スウェッツ」はその動きを敏感にとらえるものであった。ジャンプスーツ、チアリーダー・スカートからハーレムパンツに至るまで、このラインを構成する35のアイテムすべてが、お馴染みのジャージー素材を使いながら斬新なデザイン性にあふれ、瞬時に爆発的人気となった。

ブルーミングデール本店2階での「ノーマ・カマリ／エバーラスト」の展開。

興味深いことに、この春、カマリは十数年前を再現するような提案を行っている。ボクシングウエア・用品で有名な「エバーラスト」と組んで、80年代初めの「スウェッツ」のイコンと言うべきアイテムを復活させているのである。パフやプリーツで膨らませ、ドレープを魅惑的に使い、ファンキーな感覚にあふれたこのコレクションは、当時を知らない若い女性には強烈な刺激を感じさせるものになっている。素材はジャージーが中心だが、新たに、ボクシングパンツなどに見るような、やわらかく薄い金属をイメージさせるラメ糸によるものが加わり、価格はジャンプスーツのなかに400ドル近いものも見られるが、ほとんどのアイテムが250ドル以下の設定になっている。ちなみに、これを他に先駆けて大きく取り上げているのがブルーミングデールで、本店ではこの売場を2階の若い女性に先端性を語りかけるファッションゾーンに位置づけている。

心身に心地よく、しかも美的特性のある洗練された服。これはしばらく前から年を追って広がり、生活者の間に浸透してきている服のコンセプトであるが、注目したいのは、より高い創造性を持つデザイナーがこのコンセプトに着目し、新たな取り組みをすることでホットな状況を生み出していることだ。ステラ・マッカートニー（元ビートルズのポール・マッカートニーの娘として有名であると同時にファッションデザイナーとしても評価が高い）によるアディダスのコレクション、「アディダス・バイ・ステラ・マッカートニー」はその代表的事例のひとつで、ショート丈のパーカ、ジム用スパッツ、ホットパンツなど、アスレティック感覚と創造の才の融合ということで強烈な刺激をもたらしている。今回の温故知新とでも言うべきカマリの取り組みはその流れに沿うものと言える。

スポーツやアスレティックとハイスタイルとの結合。これはファッションにおける、今最も重要な動きである。