「ポクポン」。糸を巻き付けて作られた小さな人形で、常に身に着けておくことで持ち主に降りかかる災厄を食べて防いでくれるという、タイに古くから伝わるお守り人形を現代風にアレンジしたものである。その魅力は、様相がとにかくかわいらしくユーモアにあふれていること、願いごとによって膨大な種類が展開されていることにある。実際、店頭に並んでいるものをざっと数えただけでもゆうに50種類は超えている。そしてこのポクポンが都内・近郊のSCにワゴン形態の臨時店舗を出店し、若いカップルを中心に黒山の人だかりができるほどの大繁盛店になっているのである。

身体のあちこちに包帯を巻いたポクポンは危険回避、ガクラン姿のポクポンは学力アップと合格祈願、小ブタのポクポンはダイエット成功、柔道着姿のポクポンは心身強化、モヒカン頭のポクポンは創造力、キックボクサー姿のポクポンは勝利運、明らかにハリー・ポッターを思わせる魔法使いのポクポンは才能を引き出す、といったぐあいに、それぞれモチーフと効果の取り合わせには思わず納得させられるものがある。価格はひとつ1,260円で、衝動買いさせるには適切な設定になっている。

「ポクポン」のワゴン。

黒山のできるワゴンと言えば、このところ、大丸や三越などのイベントスペースに期間限定で出店し、若いOLから熟年女性までを夢中にさせているものがある。北イタリアの街、マルチェージネで1点ずつ手作りされている小さなチャームのシリーズである。これは馬蹄モチーフのチャームに、鍵、四つ葉のクローバー、楽器といった様々なチャームをひとつずつセットにし、きれいな色の革紐でくくったもので、このチャームに様々なお守りやおまじないとしての意味が込められている。ちなみに馬蹄はヨーロッパでは伝統的にお守りとして親しまれているモチーフである。

馬蹄と組み合わされたチャームには全部でおよそ400〜500の種類があるとされ、例えば仕事運を上げたいのであればブーツや王冠やドラゴンのモチーフ、恋愛運なら天使や人魚や指輪、夢の実現であればユニコーンやイルカや飛行機、対人関係ならテディ−ベアや太陽や犬、金運なら蛇やブタやカエル、魅力アップなら手鏡や口紅やシャツといったモチーフを選ぶといいとされている。これらはチャームをくくってある革紐のままバッグなどに付けてもいいが、チェーンに通してペンダントとして、あるいは携帯ストラップなどとして身につけることもでき、価格はモチーフの種類によって1,365円・1,575円・1,890円。

ワゴン発のこれらのヒット商品には、売れるモノの条件となるいくつかの共通項がある。１に、携帯ストラップに最適であること。２に、様相に、友達に自慢できる、「わぁ何これ？」と言ってもらえる面白さや珍しさ、美しさがあること。３に、お守りやおまじないとしての意味合いを持つこと。加えて勿論、衝動買いできる手軽な価格であることも。とりわけチャーミングな様相とおまじない感覚の結びつきは、この時代における「必ず売れる」モノの条件と言っていい。ワゴンなど取るに足りない存在に思われるかもしれないが、今の消費感覚をとらえるということでそこから学ぶことは多々あり、また、常設店や常設売場がかなわないほどの数字を稼ぎ出す例も少なくないのである。