ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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11.2.2006
ミニサイズの効果〜化粧品に見る『テイスティング購買』の促進

従来のものよりも容量を少なくし、容器をミニサイズ化した化粧品が女性たちの関心をとらえるものになっている。そのひとつが若い女性の間で永年、高い人気を得続けているフランスのブランド、ブルジョワによるネイルカラーとリップグロスの新シリーズ「ミニ・ブルジョワ」である。ネイルカラーの容量はこれまでの常識の3分の1から5分の1に相当する小ささ。ただし、カラーバリエーションは淡いピンクやオレンジからラメゴールドやブラックまで選びごたえのある28種類で、価格はひとつ420円。リップグロスはちょうど女性の小指ほどのサイズの容器に入った全8色で、容量はこちらもこれまでの4分の1〜5分の1程度の小ささということになる。また、リップグロスの容器は小さいがゆえに携帯ストラップとして楽しむこともできる作りになっており、それも女性たちを惹きつける重要なポイントになっている。こちらはひとつ682円。

「ミニ・ブルジョワ」の展開。

メイクアップ化粧品における同様の商品開発は、若い女性に人気の化粧品ブランド、エテュセによる「バカンスネイル」にも見られる。これは「ミニ・ブルジョワ」よりもさらに小さく、18種類のカラーバリエーションがあってひとつ210円。またコーセーのメイクアップ化粧品ライン「ファシオ」でも、通常の3分の1の容量で高さ6cmという小さいサイズで企画した口紅が好評を得ている。

注目したいのは、こうしてミニサイズ化することが、「ネイルカラーは使い切る前に固まってしまう」ことが当たり前と思ってきた女性たちに「これなら無駄なく使える」というひらめきをもたらしていること。また、気軽に試せることから『テイスティング購買』を引き出すものにもなり、この程度の容量と価格なら普段とは違う大胆な色にも挑戦してみたいという気持ちにさせる。だからいくつも買いたくなるし、安いからそれができる。さらには、ミニチュアサイズとしてのかわいらしさがあることもあって、まとめ買いをして友人たちへのちょっとしたギフトとして配るといった楽しみもあり、勿論、旅行などに持って行くのに便利という一面もある。

既成の容量をミニサイズ化することでヒットにつながった事例と言えばアイスクリームやクッキーなどのお菓子類が思い出されるが、この法則をあてはめてみることのできるモノは化粧品以外にもまだまだあるのではないだろうか。いや、それはミニサイズ化するだけでなく、反対にビッグサイズ化してみるという視点もある。サイズの大小ばかりでなく、もっといろいろな方向へ広げてみることもできる。ともあれ、面白い商品とはしばしば、これまでの常識を疑ってみるところから生まれるものである。





 

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