ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
1.1.2007
「ホテル仕様」という切り口に注目

「ホテルインテリア」という言葉も登場してきているように、最近、ラグジャリーホテルの客室のインテリアが美的にも質的にも高度なレベルにあるものとして注目されている。実際、これらのホテルでは世界でトップクラスの空間デザイナーを起用し、インテリアデザインでも競い合う動きが見られる。高度な空間の体験を目的にこの種のホテルに宿泊する例も少なくないし、体験にとどまらず、自宅の居住空間作りのお手本にする動きも出てきている。こうしたなかでラグジャリーホテルの客室のファーニシングに関心が高まり、優れた水栓金具メーカーとして有名なドイツのグローエの「レインシャワー」なるシャワーヘッドといった思わぬモノがヒットしている。

この状況に応えるように、いくつかのラグジャリーホテルではオンラインショップを開設し、客室で使用しているのと同じベッド&バス関連品、アメニティグッズを商品として販売する動きが目につくようになってきている。いずれも取り上げられているのはそのホテル自慢の逸品で、なかでも興味深いのがウェスティンホテル東京の「ヘブンリーベッド」である。利用者の高い満足が自家需要へと発展しているのだが、考えてみれば、ホテルは寝具をテイスティングするうえでのこれ以上ない場なのである。いや、寝具に限らない。客室は、シャワーヘッドがそうであるように、そこにあるすべてのファーニシングスがテイスティングの対象になるととらえることができるのである

このことは高級ベッドリネンに目を向けるという新たな動きも生み出している。ラグジャリーホテルでは、なめらかな肌触りを追求して最高級素材によるベッドリネンを装備しており、なかでもよく取り上げられているのがイタリア「フレッテ(FRETTE)」である。これを受けて一部の百貨店では「フレッテ」(シングルサイズのピローカバー、シーツ、掛布団カバーの一式で11万円くらいから)のショップ導入を図る動きも出てきており、高質なベッドリネンは百貨店のホームにおける新たな訴求テーマになりつつある。ちなみに、「フレッテ」は既にアメリカの高級百貨店においては不可欠のものになっているのだが、この動きはニューヨークのフォーシーズンズやウォルドーフ・アストリアといった高級ホテルでこれが使用されていることと関係があると見ることができる。

メーシーでの「ホテル・コレクション」の展開。

「ホテルの客室のファーニシング=高質」というイメージが広がることを汲み取って、アメリカではホテル仕様を訴求ポイントにするMDも登場してきている。メーシーがPBとしてホームの売場で展開する「ホテル・コレクション」と名付けた、ベッドリネン、コンフォーター、ピロー、ベッドスプレッド、バスローブ、タオル、バスアクセサリーなどのアイテムで構成するラインである。商品の特色は高い数値のスレッドカウント(生地1インチ四方に織り込む糸の総本数で、数値が高いほどきめ細かく、なめらかになる)とカシミアを含む高質な素材の結びつきにあり、それがホテル仕様、即ちネーミングの「ホテル・コレクション」の裏づけになっている。商品は全体に渋い無地カラーでありながら艶やかさと極上の肌触りを感じさせ、価格はクイーンサイズのシーツで135ドル、アイテムによっては800ドルと、これまでの常識を超えるものになっている。

ラグジャリーホテルの客室がプレミアムな暮らしの指南役になってきているなかで、「ホテル仕様」をうたうことが商品開発やMD開発の切り口として新たな可能性を持っていることに注目したい。





 

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