ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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7.10.2007
「対」の常識を破壊して楽しむ

着るものやインテリアをひとつのスタイルや調子でまとめることは、わかりやすいが、退屈でもある。いわゆるトータル・コーディネイトが敬遠されるようになり、異なる感覚のものを自分のセンスで取り合わせる、着こなし、住みこなしが当たり前の表現術になったのが1970年代のことである。以降、常識的な秩序をきわどく崩しつつ、それでいて全体としてひとつの美を感じさせることが「センスの良さ」の評価のポイントになる時代が続いている。生活表現のいろいろな面で単調さは程度の低いものとして避けるべきこと、慎むべきことになっているように思われる。

そんな情況がもう30年も続いているのだが、左右が違う色柄のソックスや靴を履くといったところまでの「崩し」が常識化することはなかった。対のものを別々にこなすことは想像を超える非常識と思われてきているのである。ところが、この非常識を一気に常識にしてしまいそうな、面白い商品が出てきている。「プラザ」(旧ソニープラザ)などの人気雑貨店で見かける、その名も「リトル・ミスマッチ」なるソックスがそうである。このブランドは、鮮やかで元気な色の水玉、ボーダー、ジグザグ、ハート、星、デイジー、イルカ、ウサギなどの柄によるソックスを、『1.5足』のセットで企画し販売しているのである。つまり、「リトル・ミスマッチ」では1足の単位が2本ではなく3本になっており、しかも3本すべて色柄が違うのである(3本セットが1,344円の一律価格)。

それでいて、これらはどう組み合わせても感覚的共通性があり、他人の目にも「面白い崩し方をしている」と映る。そのポイントは商品が同社の独自のカラーホイール(色の相環)に沿いながらデザインされていることにある。カラーホイールは4つのグループに分けられており、そのグループ内の組み合わせであればバランスが取れるのである。従って顧客はセット販売されているものとは違う組み合わせにも挑戦でき、さらに楽しみの幅が広がる。ちなみに「リトル・ミスマッチ」のソックスには現在200種類のデザインがあり、合計すると19,900通りの組み合わせが可能で、これは54年間にわたって毎日異なる組み合わせができるということでもある。

大人物、子供物のソックス以外にも「リトル・ミスマッチ」ではビーチサンダルも展開している。これも左右が異なる色柄で組み合わされており(ただしこちらは通常の1足が1セット。2,604円)、大いに遊び心を刺激される。なお、「リトル・ミスマッチ」は2003年にサンフランシスコで創業した企業で、アメリカでの展開アイテムは多岐にわたり、勿論、いずれにもこのブランド流のミスマッチが特色になっている。既にカフリンクスなどでも見られるが、対のものの持つ常識的秩序を崩してみる発想には興味深いものがあり、適用できる対象はまだまだありそうだ。





 

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