ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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1.10.2008
モノと一緒に暮らすという意識に応える〜人気の加湿器に考える

4年ほど前に登場して以来、美意識の高い生活者を刺激しているデザイン家電ブランドに「±0(プラマイゼロ)」がある。AV機器、電話機、ヒーター、懐中電灯など、いずれもがミニマリズムを究めるモダンの粋を感じさせると同時に、ウィットに富み、どこかほっとさせる表情をしている。「一緒に暮らしたい」、そんな気持ちにさせるモノたちである。ちなみに、これを手がけるのがプロダクトデザイナーとして評価の高い深澤直人である。この「±0」のなかで人気商品になっているのが加湿器である。見る角度によってはドーナッツのようにも円盤のようにも見えるフォルムで、アートオブジェのような美的存在感を持つところに惹きつけるポイントがある。

加湿器と言えば、今シーズン注目されているのが超音波式の「チムニー3(Chimney3)」である。これは、東京とロンドンを拠点に活動している、日本人を含むデザインユニット「アイフォー」がタクミとのコラボレーションで生み出した商品で、その特色は、これまでの加湿器に抱いてきた概念を超える姿形にある。写真でおわかりのように、これは本体の上に吹き出し口となる煙突が結合したもので、そのネーミング通り、まさにチムニー(煙突)の姿形をしているのである。しかも、その吹き出し口からはモクモクと蒸気が発生し、まぎれもなくチムニーがそこに鎮座している印象となる。勿論、様相の面白さだけでなく、蒸気が110cmの高さから出ることで、効率よく加湿する効果もあり、省エネ設計にもなっている。価格は15,750円。

実際にこれを購入し、使用してみると、新しい発見もある。それは、吹き出してくる白い蒸気を眺めているうちに、どこか心が穏やかになってくることである。加湿効果にとどまらず、緊張を解きほぐし、鎮静効果を持つということで、これは心身に効用のあるモノに思えるのである。それはさておき、「チムニー3」を眺めていて思うのは、美的価値は付加価値ではなく、モノの価値の本質そのものだということであり、そのことを改めて認識してかかる必要のある時代だということである。

「±0」の製品や「チムニー3」に共通しているのは、『生活臭を感じさせない生活用品』であるということだ。そしてそこに新しいデザイン力を考えていくポイントがあるように思えてならない。突き詰めてみると、住空間は自分とモノと環境が一体になって創り出す『美的世界』である。そんな価値観がはっきりと台頭してきている時代である。





 

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