ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録 |
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9.10.2008 ラーメンがもてなし料理になるという視点から 様々な動機、目的を持ってホームパーティーが活発化し、当サイトでも考察したように(本年1月10日)、消費の巨大なテーマになっている時代である。このホームパーティーで最近、もてなし料理として人気になってきているのがラーメンである。地方の名物・名店ラーメンを探し出し、取り寄せて振る舞うというのも招いた友人・知人を感嘆させることになるのだが、それよりも感嘆度が高いのが、もてなす側が麺やチャーシューもこだわって選びながら、スープをだしから自分で作るラーメンである。基本的にラーメンは嫌いな人が少ないうえに、世のラーメン屋のなかには、ラーメン好きが高じて店を始めたという例も少なくないように、深めがいのある、その人なりのこだわりの求めどころ、蘊蓄の傾けどころもある食べ物である。そういった意味では、きわめて日常的なものであるが、ホームパーティーという「発表の場」にふさわしい作品としての料理になる。 さて、そうなると次は、ゲストをおもてなしするのにふさわしい、しかも自分の作品としてのラーメンを演出してくれる美的緊張感のある器が必要になってくる。そこでラーメン鉢をテーマにするクローズアップMDが期待されることになる。そしてそれに応えた興味深い事例が、新宿高島屋がホームのフロアで打ち出した「究極のラーメン鉢」と呼ぶMDである。ざっと数えただけでも30〜40種類はあるだろうか。いずれもサイズ、形状が同じで、鉢と揃いのデザインによるレンゲがセットされているのだが、染付あり赤絵あり金刷毛目あり、渋い焼締風のものもあれば淡いピンクやブルーの花紋もあるといったぐあいに、従来のラーメン鉢に抱く印象を超えて、魅惑的な器として所有欲を刺激する。ちなみにこれは有田の14の窯元が共同で開発したもので、デザインのバリエーションは100種類を超え、鉢の価格は3千円台から5千円台を中心に2万円程度までの展開になっている。
ラーメンに平凡で卑近な食べ物としての範囲を超え、おもてなしにふさわしい「ご馳走」の性格を求めることで、美的に質的にも価値の高いラーメン鉢という新たな需要が生まれてくる。これはマーチャンダイザーが留意しておくべき欲求のリレーションであるが、そう言えば、このリレーションはそっくりそのままカレーライスにも当てはめることができるのではないか。現実にカレーライスもまたホームパーティーにおけるもてなし料理になっており、もてなす側が腕を振るうということで作品的性格を持つ。となれば、当然、興味は器やカトラリーへと広がっていく。 料理作りを家事労働としてではなく、趣味として創造的に深めていくというこのところ長く続くトレンドと、ホームパーティーを開くことが活発になっていること、そして、そのいずれにおいても男性が存在感を増していること。こうして今の時代をとらえていくうえでのきわめて重要な視点が結びつきながら、一見瑣末に思えるところにも新たな需要が広がってきていることに注目したい。
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