ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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10.25.2008
趣味や旅の記録ノートが心を揺さぶる

最近、伊東屋や東急ハンズのステーショナリー売場で目に留まるのが「トラベラーズ・ノート」なるものである。味わいのある、手に馴染む、ブラウンやブラックのやわらかい革表紙。中にはごくシンプルな作りの、書きやすい紙によるノートや、クリアポケットがセットできるようになっている。バッグに入れた際などにノートが開かないよう、革表紙にはゴムバンドも付いている。ジャケットのポケットにも入るサイズは携行しやすく、予定などをメモする、旅につきもののエアラインや鉄道等のチケットをしまって持ち歩くのに便利である。価格は3,360円。中身のノートは差し換えることもでき、罫や紙質が異なるリフィルノートも用意されている。

「トラベラーズ・ノート」には旅の便利グッズの一面があることは確かだが、同時に、旅を自分流に記録してみたいという欲求を刺激するものがある。それが購買へと発展する大きな要因であり、実際、このノートがあれば、旅の先々での感動を記した文章や文言や手描きの絵と、それらを補完するものとしての地図やパンフレットやチケットの類をまとめて残しておくことができる。こうして旅は自分が創造する作品になるのであり、その充足感は豊かさのひとつと実感できるのである。

ステーショナリーメーカーであり専門店も展開するマークスによる「ライフスタイル・ノート」の店頭展開。

同じような性格で興味を惹くものに「ライフスタイル・ノート」がある。これは使い手がそれぞれの趣味に合わせて選んで使用することができる、趣味ライフのための記録ノートである。従ってこれには、旅、映画、読書、料理レシピ、カフェ&レストラン、ショップなどいくつかのテーマがあり、それぞれのノートの中身はそのテーマの記録をするのに適したように設計されている。例えば映画ノートでは、映画のタイトル、監督、脚本、出演者、公開年、製作国、配給会社、ジャンル、観た日付、感想などを書き込む欄があらかじめ用意され、これから観たい映画のチェックリストや、お気に入りの映画館やレンタルDVD店のリスト作りのためのページも添付されているといったぐあいに。やはりポケットやハンドバッグにコンパクトに収まるサイズで、1冊1,470円。

自分の趣味や旅の記録をブログとして発信することに意義を見出す人もいようが、「トラベラーズ・ノート」や「ライフスタイル・ノート」のように、自分自身による手書き・手描きによる記録ノートには自分の作品としての意味がある。それは私的な形で残る、自らの興味と関心に基づく知的な探究の旅の足跡としての重みを持つ。そしてこうしたノートが1冊、2冊と増えていくにつれ、けっして大袈裟ではなく、生き方における充足感を覚える。今ならびにこれからの時代、豊かさを商品にどう翻訳していくかのヒントがある。




 

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