ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録 |
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5.11.2009 「聡明な消費」意識に語りかけるブリーフケース〜「トライオン」のグローブレザーバッグ 魅惑的な薀蓄のあるモノと出会うと購買へと発展しやすい。これは何でも持っている飽食の時代における購買喚起を考えるポイントでもあるが、そんなことを再認識させる事例が「トライオン」という、メジャーリーガーなどに野球用グローブを供給しているメーカーによるバッグである。勿論、バッグはグローブ用レザーを使ったもので、このレザーには、打球を受けても破れないように衝撃吸収性を高める厚みがある、柔軟性と耐久性がある、色が一定に定着し、発色がよく、しかも比較的軽いといった特性がある。 「トライオン」にはブリーフケース、トートバッグの2種類のスタイルがあり、いずれもがシンプルですっきりとしており、野球のグローブがそうあらねばならないように、装飾は微塵もなく、機能に徹した印象がある。見た瞬間に「こんなバッグは見たことがない」と自覚し、とりわけ他にはないポイントとして目につくのが、この種のバッグにつきもののマチがないことである。それが無駄をそぎ落としたミニマルな印象を強調する要因にもなっており、ここにグローブレザーを使用したバッグとしての特色がある。つまり、野球のグローブが使い手になじんでいくように、このバッグは使う側がそこに入れるモノによって変形していくように作られているのである。同じミニマルデザインであっても、それは画一的なものではなく、使い手によって形状の異なるミニマルデザインへと変化するのである。
野球のグローブ同様に、使うほどに自分だけのモノになる。それはモノとの長いつき合いがもたらしてくれる最大の喜びであり、バッグにそれが期待できることは購買への大きな動機となる。ちなみに価格はA4タイプで10,500円〜16,800円。質とその持ち味からするとかなりこなれた印象を受ける。「聡明な消費」を心がける時代にあって、この意識を商品開発に翻訳するキーワードのひとつとなるのが「ロンジビティ(長命・長寿)」である。モノと長くつき合うことが聡明な消費につながるのだが、これと重ね合わせてみると、「トライオン」は売れるモノの条件を考えるうえでの優れた事例として受け止めることができるのである。 |
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