ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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1.23.2006
アート遊びが魅力の手作り飴専門店

東京・中野駅に程近い昔ながらの商店街、薬師あいロードに、周辺の風景とは不釣り合いとも思えるオシャレな構えの店が誕生している。スペインのバルセロナに本店のある飴専門店「パパブブレ(Papabubble)」である。モダンなアトリエを思わせる店内に足を踏み入れると、一方の壁面沿いに伸びる大きな鉄板を備えたカウンターがまず目に入る。そしてもう一方の壁面には、様々な形をした大きなロリポップ(棒付き飴)も含めて、シルバー色のパッケージやボトルに収められた色とりどりの、きれいな飴がずらりと並んでいる。

これらの飴はすべて、店頭にある大きな鉄板カウンターで、スペインで修行を積んだ職人の手によって完全なオリジナル商品として毎日手作りされている。この鉄板カウンターでは一日に6〜7回にわたって飴作りが行われるのだが、その一部始終はアーティストによるライブパフォーマンスに匹敵する面白さがある。つまり、最初は直径20cmほどの巨大な飴の塊が、手作業によって引き延ばされ、最終的に小指の爪ほどのサイズにまで小さくなっていく。その風景はエンターテイメントとしての価値を持つこの店の売り物になっている。

この店を特徴づけている商品のひとつに細かな図柄を表現した金太郎飴状の飴がある。フレーバーになっている様々な果物の形や切り口を表現したもの、あるいは「I LOVE YOU」といった文字を表現したものなどがあるのだが、その一粒一粒はよくぞこんなにも細かい芸ができるものだと感嘆させるほどよく出来ている。また、この店では文字入れなどの注文にも応じている。ロリポップの場合は1個から受けており、基本のロリポップに飴の生地で文字を書き入れるタイプがロリポップ代別で800円、ロリポップの色や形から注文する場合は4,000円から。粒の飴の場合は5kgから受けており、ウエディングのプチギフト用として新郎新婦の名前を入れたり、会社などの記念ギフトとして社名を入れたりといったことができる。

飴でアート遊びを楽しむ。これが「パパブブレ」の画期的なところなのだが、確かに飴一粒にアーティスティックな様相がある。しかも魅力は見た目だけに終わらない。味覚に「飴とはこんなにおいしいものだったのか」という感動がある。価格は小袋入りが400円、ボトル入りが700円と、一般的な飴に比較すれば割高ではあるが、それでも安いと思わせる魅力がある。飴という駄菓子であっても、しっかりと視点を持って極めれば、広域から集客する力を持つ店を創造できる。学ぶところのある事例である。





 

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