ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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3.1.2006
氷の環境で体験意欲をそそる新『環境バー』

スウェーデン北部・ユッカスヤルビにアイスホテルなるものがある。これはその名の通り、雪と氷で造ったホテル。毎年冬の初めあたりから、村を流れるトルネ川から切り出した氷と雪で造り、インテリアについては世界の様々な彫刻家なども参加する。勿論、春には融けて消滅するわけで、従って毎年「新築」される。日本の「かまくら」を部屋数が数十になる規模にしたものと考えてみるとわかりやすいものである。室内はマイナス6度と冷凍庫に近い状態だが、体験意欲をそそることもあり、そのうえオーロラが見られる場所であることも手伝って、日本を含む世界から観光客が訪れる。

このアイスホテルの中にアイスバーがあるのだが、何とこれを再現したものが先月、東京・西麻布のビルの1階に登場している。アイスホテルと自動車部品などを扱うカロッツェリアジャパンとの共同プロデュースによる「アブソルート・アイスバー東京」(港区西麻布4-2-4)である。勿論その特色は、店内の壁、カウンター、テーブルからグラスまですべて氷で造られていることにある。ちなみに、西麻布店は店舗面積約75・で、ストックホルム、ロンドン、ミラノに続き世界で4店舗目、アジア初の出店となる。

使用した35トンの氷は、世界で最も純度が高いと言われるスウェーデン北部のトルネ川から採取し日本に輸送したもの。店内の室温はマイナス5度に設定、エントランスには冷気を逃さないエアーロックを導入するなど、ヨーロッパに展開する店と同様の店作りを実現している。このように、室温の低さ、インテリアが氷であることから、通常の格好では入店できない。そこで、入店前に受付カウンターで専用ルームに収納されている特製の防寒用ケープと手袋を受取り着用するのだが、これがそもそもアミューズメントパークのアトラクションを楽しませるような気持ちにさせる。

店内では、アブソルートウォッカをベースにした12種類の色鮮やかなオリジナルカクテルを氷のグラスで楽しむことができる。氷を通しての青や赤などのカクテルの色はアーティスティックであると同時に幻想的で、別世界に身を置く気分になる。利用時間が1回45分の時間制になっており、料金は防寒用ケープと手袋に1ドリンク付きで3,500円。2杯目以降はカクテル1,200円、ソフトドリンク1,000円、新しい氷のグラス800円。営業時間は17時〜24時。

ビル内にある西麻布のアイスバーは通年営業する常設店で、既に予約が必要なほどの人気店となっている。どの程度リピーターを獲得できるのかは疑問だが、一度は体験したい観光スポットとして当面、繁盛を続けることは間違いない。環境レストラン、環境クラブなど、環境を売り物にする飲食業態の開発は1980年代の半ばから見られるようになったトレンドだが、これまでの事例のなかでも、アイスバーは想像をはるかに超えた環境を特性にしているということで際立っている。観光には「土産話作り」という一面があるが、ここはまさにうってつけのスポットである。東京の名所であることは勿論、日本の名所、さらにはアジアの名所にまで広がる可能性を持っている。となれば、一見客を相手にしただけで繁盛を持続できるということになる。





 

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