ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
4.1.2006
発展するレンタルボックス・ギャラリー

約30cm四方の箱(店によって大きさや形状は異なる)を有料で個人に貸し出し、そこに手作り作品などを展示し販売してもらうレンタルボックス・ギャラリー。奇想天外なアイディアを感じさせるこの新商売が登場したのが6年前のことである。面白いが、果たして継続するのだろうか。当初抱いたそんな不安を一蹴するように、その後この新商売は全国に広がり、既成のアートギャラリーの枠をはみ出た、新業態と呼べる地位を確立しつつある。また、店によっては作品のテーマを「和」や「アート」に絞る、什器にも趣向を凝らすといったぐあいに、独自性を追求する動きも見られるようになってきている。

レンタルボックス・ギャラリーの先駆けとなったのが、2000年6月、東京・西荻窪にオープンした「ニヒル牛」である。店内には235個の木製のボックスがあり、一風変わったものも含めて、二つとない手作り作品が所狭しと並ぶ。作品のなかには自作自演のCDのコーナーもある(視聴ができる)。ここではボックスレンタルに際しての審査はない。基本的に自分が作ったもので、一般の流通ルートには乗っていない作品なら、誰でもどんなものでも置くことができる。1区画の月平均レンタル料は1,200円。商品の価格も出品者が自由につけることができ、販売額の30%を手数料として支払う条件になっている。

「ニヒル牛2」/東京都杉並区西荻北3-26-5。

「ニヒル牛」は今なお出品需要が高く、3ヶ月先まで『箱待ち』の状況である。そこで「ニヒル牛」では、昨年夏、2号店となる「ニヒル牛2」を同じ西荻窪に開設している。ただし、こちらは1号店と異なり、レンタルボックスの形態をとらず、レンタルスペースに新たな趣向を取り入れている点に特色がある。つまり、くりぬかれた地球儀や柱時計、鳥籠、駄菓子を入れるガラス瓶、ちゃぶ台、マネキンなど、大小取り混ぜた古道具をレンタルスペースとして設定しているのである。従って、ガラスの金魚鉢の中に編みぐるみ、昔の小間物屋にあったミシン針ケースの中に手作りハンコ、小さな木製のオルゴール箱の中にビーズのアクセサリーといったぐあいに、レンタルスペースである古道具の持ち味と作品がマッチした時には作品の魅力も倍増する。ちなみにレンタル方法は1号店と同様である。

レンタルボックスの借り手、即ち出品者は、素人を中心にした、創作者としてまったくオーソライズされていない無名の人たちである。こうした言わば『自称・創作者』は世の中にかなりの数いると思われるが、彼らの創作への気持ちは、作品発表の場を得ることで達成される。また、作品発表の場があることで、体内に眠っていた『自称・創作者』の一面が呼び覚まされ、何らかの作品作りという趣味へと発展する。こうしてみると、レンタルボックス・ギャラリーは創作活動を趣味として押し広げ、ライフスタイルを刺激する役割を果たしていることでも見逃せない存在と言えるのである。





 

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