ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
6.12.2006
形状で購買意欲をそそる〜スウィーツ専門店に見る新しい視点

今春開業したSC、立川の若葉ケヤキモールやアリオ亀有に新しいタイプのスウィーツショップ「スティックスウィーツ・ファクトリー」が導入され、小さな子供連れから若い女性、熟年・高年の男女まで幅広い層の顧客を集めて賑わっている。広島市に本拠を置く飲食企業、インスマートが展開するこの店は、その名の通り、長辺12cmほどの細長いスティック状という形状に特色を求めたスウィーツ専門店である。

「スティックスウィーツ・ファクトリー」

開発のヒントは、このところ一般のスウィーツショップなどでも人気になっているスティック型のチーズケーキ「ニューヨークチーズケーキ」にあると思われるが、この店ではそのニューヨークチーズケーキは勿論、豆乳チーズケーキ、抹茶と大納言のチーズケーキ、チーズケーキとリンゴのコンポートなどのチーズケーキについてのバリエーションの他、マスカルポーネとヘーゼルナッツのムース、ブルーベリーのミルフィーユ、季節のフルーツタルトなど、まさに一般のケーキをスティック状にデザインし直した印象のスウィーツを常時20〜30種類のバリエーションで展開している。1本140円〜220円と価格が手頃なこともあって、いろいろなものをたくさん楽しみたい気持ちをそそる。

ところで、最近、いろいろなスウィーツショップをのぞくたび、新たな商品として目に止まるのがマカロンである。なかでも今ホットになっているのは、間にジャムやクリームを挟んだ丸い形のものである。桜やオリーブといった予想外のものも含めて、店によって実に様々なフレーバーがあり、パティシエにとって改めて創造性を傾けるに値するアイテムになってきていることが伺える。また、マカロンとならんでにわかに注目のアイテムになってきているのがエクレアである。これにもまた予想外のものも含めた多彩なフレーバーを求めることで、改めて食探検意欲をそそるスウィーツになってきている。しかも興味深いことに、最近、様々なフレーバーによるマカロンとエクレアを隣り合わせでずらりと並べ、視覚に訴えるプレゼンテーションをする店が増えてきている。

「マムールS」。

そのひとつがエチカ表参道の資生堂パーラーによる新業態「マムールS」である。ここでは5種類のマカロン(オレンジジンジャー、シトロン、ピスタチオ、チョコレート、アールグレイ)に加えて、エクレアについても5種類のフレーバー(チョコレート、コーヒー、バニラ、シトロン、フランボワーズ)を創造し、この両者を並べて通路沿いのガラスケースにずらりと並べている。どちらも色鮮やかな果物のフレーバーが加わることで通りがかりにも視線を引きつける華やかさが生まれ、1個168円という気軽さもあって衝動買いを誘う。小さくてかわいらしいものがずらりと並んだ風景を目にすると、人は無意識のうちに引き寄せられ、モノ選びにはまり込んでしまう習性があるが、マカロンやエクレアにも同様の働きがあるように感じられる。

これらの事例に読み取るのは、形状という視覚に訴える要素で興味を、そして食欲を刺激し、購買へと導くことが、特色あるスウィーツ専門業態開発の考え方になり得るということである。勿論、これらの形状が食べやすさにつながっている点を見逃すわけにはいかないが、既成のスウィーツを視覚的刺激につながる形状の視点からとらえ直してみることで新たな提案を創造できる可能性があるということだ。





 

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