ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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1.1.2007
「創作的取り組み」をとらえる新専門業態「パピエリウム」
〜スクラップブッキング、カルトナージュに着目する〜

このところ女性の間で急速に人気を広げているのが、スクラップブッキングと呼ばれるアメリカ発の創作活動である。これは紙焼き写真によるアルバム作りを創作として掘り下げるもので、アルバムの紙台紙に、写真を自由に切り抜いたりして配しながら、カラーペーパーやステッカー、スタンプ、リボン、あるいは旅先の思い出の品なども使って装飾的なクラフト作品として仕上げていくというものである。この創作活動にのめり込む大きなきっかけになるのが結婚や出産で、特に結婚式のようなメモリアルイベントについては、スクラップブッキングの手法で自分の作品としてのアルバムを仕上げる人も少なくない。

こうした作品としてのアルバム作りを楽しむようになると、中身同様にこだわりたくなるのが表紙で、これについても創作したいという気持ちになってくる。そしてこれが、もうひとつの注目の創作活動、カルトナージュへと広がっていくことになる。これは厚紙にきれいな布や紙を貼って、アルバムやノートの表紙、収納ボックス、ギフトボックス、写真フレーム、整理トレイなどに仕上げるものである。例えば、思い出の写真を自作のカルトナージュのフレームに収めて飾る、カルトナージュで仕上げた小箱にギフトを入れて贈る、といったぐあいに。この創作活動もまた女性の間で急速に人気が高まってきている。

スクラップブッキングやカルトナージュに関心を寄せる背後には、現代の若いお母さんたちがティーンの頃から親しんできた「遊び」があることを見逃せない。ステッカー、スタンプ、カラーペン、そしてプリクラである。これらを駆使して、ノートや教科書のカバー、アドレス帳、スケジュール帳といった携行品、あるいは友達どうしの間で交換する手紙やメモを、創作的遊びとして楽しんできたのである。この遊びは次の世代へと継承され続けているのだが、その先駆者となった世代も今では既に30歳前後に達している。そんな女性たちが結婚や出産をきっかけにスクラップブッキングやカルトナージュに興味を示すというのはごく自然なことである。

「パピエリウム」。

スクラップブッキングやカルトナージュという新創作活動に着目すると新たな専門業態開発の可能性が見えてくる。その注目事例が、銀座伊東屋が本館の裏手にある別館2号館をリニューアルして開発した「パピエリウム」という、「紙と箱」をテーマにした創作材料と道具の専門店である。1・2階、2フロアで構成され、ラベル、カード、リボン、ステッカー、デコレーションシート、アルバムと台紙、ラッピングペーパー、クラフトパンチ、ラバースタンプ、エンボスプレート、カリグラフィー用品、様々な形を簡単にひくことのできるクラフト用の定規やハサミなど各種材料・道具類を展開。いずれについても上質なものを中心に膨大な種類を揃え、スクラップブッキングとカルトナージュを軸に据えながら、広く紙と箱にまつわる創作的取り組みすべてに応えるということで、デスティネーションストアとしての価値を感じさせるものになっている。

「パピエリウム」は従来的分類をすればステーショナリーストアということになるのであろうが、生活者を観察していると、この幅広い商品分野に「創作的取り組み」という軸が通ってきていることに気づく。そこに着目すると、より明快な専門性とつき合い価値を感じさせる業態開発が可能になる。考えてみれば、もはや「ステーショナリー」には専門性の意味が感じられない時代である。専門性を深耕すること、価値ある専門業態開発の切り口を学ぶということで「パピエリウム」は示唆に富んだ事例である。





 

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