ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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7.10.2007
百貨店顧客をも惹きつけるディスカウンター、ターゲット

ディスカウンターは日常生活全般に関わる様々なカテゴリーの商品を低価格で提供するところに基本業態としての特性がある。ディスカウンターの突出した第一人者であるウォルマートは、この特性を踏まえ、絶えず安さに磨きをかけ、感動的な低価格商品を提供し続けることで持続的成長を実現している。安さを価値に繁盛を持続するのは想像以上に難しいことであり、そのことをとってもウォルマートは高く評価されるべきだろう。一方、売上高では大差があるが、全米第2位にランクされるディスカウンターがターゲットである。こちらも持続的成長を遂げているのだが、興味深いのは、ウォルマートとは異なる方向性で低価格と取り組んでいることである。それは低価格とファッション性の高さを握手させることで、そこにターゲットの存在価値がある。

ターゲットは「ディスカウンターの展開する低価格商品にセンスのいいものはない」という既成の業態評価を打破する「低価格・高感度」商品戦略を多様なカテゴリーにわたって打ち出し続けてきているのである。例えば、ファッションデザイナー、モッシモ・ジアヌリーによる紳士・婦人・子供にわたるカジュアルファッションがある。有名なメイクアップ・アーティスト、ソニア・カシュクによる、モダンデザインの粋を感じさせる極薄の容器が印象的な化粧品がある。世界的な建築家でありインダストリアルデザイナーであるマイケル・グレーブスによる、高い審美性と機能性が見事に調和したキッチンウエアを中心に構成する「マイケル・グレイブス・コレクション」がある。

ターゲットのこの取り組みはこのところさらに活発化している。そのひとつが、高級ファッションで知られるニューヨークデザイナー、アイザック・ミズラヒと組んだ「アイザック・ミズラヒ・フォー・ターゲット」。この婦人服ラインはミズラヒ流のシンプルなシルエットとカラフルな色使いがデザイン上の特色になっており、勿論、価格は、ジャージードレスが34ドル99セント、長袖Tシャツが9ドル99セント、バッグが22ドル99セント、靴が29ドル99セントといったように、ディスカウンターにふさわしいものになっている。

アイザック・ミズラヒの展開。 スターバックスの導入にもこの店の感度の高さを感じ取れる。

また、ターゲットはこのところホームの分野についてもデザイナーとの取り組みを強化している。その代表的なものがニューヨークのデザイナーズホテルのファーニシングでも知られるトーマス・オブライエンによるターゲット・オリジナルのラインである。これはテーブル、椅子、棚、敷物、カーテン、テーブルウエア、ベッドリネンといった広がりのあるアイテムで構成されるホームファーニシングのトータルラインで、伝統的な優美さとモダン感覚の融合するオブライエンならではのデザインスタイルが十分に感じられるものになっている。そして、家具アイテムでも100ドル前後から250ドルあたりまでの設定になっており、率直に安いという印象を抱く。

ちなみに、ターゲットではこのところ、面積16,000・程度の規模の「スーパー・ターゲット」の開発推進と取り組んでいる。そこでは、食料品ゾーンのほか、パティオ家具も含んでホームファーニシングも強化拡充され、さらにはスターバックスやピザハットなどの飲食装置も導入されている。このようにターゲットは、百貨店顧客が反応する高感度なビッグネームのデザイナーやブランドとの取り組みを強化しつつ、その独自性にさらに磨きをかけている。言うまでもなくそれらのビッグネームの商品はターゲットでしか手に入らない。となれば、百貨店顧客もまたターゲットで買い物をする。高感度と低価格を握手させる商品戦略は、こうして百貨店でなされるはずの買い物をディスカウンターが奪い取る方向へと発展しているのである。ターゲットに注目しておかねばならない理由がここにある。





 

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