ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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10.10.2007
「サンプル・ラボ」〜新しい形のアミューズメント施設

7月下旬の開業以来、整理券配布による入場制限が続く盛況ぶりを示し、女性の間での一番のホットスポットになっているのが、原宿の明治通り沿いに誕生した「サンプル・ラボ」である。ここは企業の要請を受けて様々な商品サンプルを揃え、それらを「サンプル・ラボ」の会員(登録料300円・年間フリーパス1,000円)を対象に無料で持ち帰って試してもらうという施設で、運営しているのは、街頭でのチラシ配布やカタログなどのメール便発送、サンプリング調査などを主な業務にするメル・ポスネットである。

「サンプル・ラボ」の利用の仕組みをかいつまんで紹介しておく。会員の条件は15歳以上(中学生不可)であることと、個人用の携帯電話を所有していること。氏名、住所、生年月日、性別、既婚・未婚、子供の有無などの個人情報を提供して会員登録し、「サンプル・ラボ」に出向いて会員登録料と年間フリーパスの支払いをする。あらかじめ整理券の番号順に並んだうえ、番号の若い人から一人ずつ入場する。総面積約330・の施設内には、インスタントラーメンやガム、健康ドリンク、調味料などの食品から、缶チューハイなどの酒類、ダイエット食品やサプリメント、スキンケア製品やヘアケア製品を中心とする化粧品関連など様々なカテゴリーにわたるサンプル品が用意されており、それらは常時100種類を超える。サンプル品と聞いて一般的にイメージするような小さなパックのものだけではなく、特にインスタントラーメンやドリンクなどについては実際の商品と同じ容量によるものも少なくない。なお、これらサンプル品のなかには、一人が持ち帰れる個数に制限のあるものもある。

持ち帰りたいサンプル品を選んだら、一般の小売店のレジにあたるコーナーで、再び自分の会員コードをかざして持ち帰るサンプルの登録を行う。これによって「サンプル・ラボ」側では、どんなプロフィールの会員がどんなサンプルを持ち帰ったか、同時にそれぞれの会員がいつ、何を持ち帰ったかといった履歴を把握することができる。また、サンプル品のなかには、試用後にインターネットを通してアンケートへの回答を求められるものも多くある。アンケートへの回答は義務ではないが、回答するたびにポイントがたまり、ポイントが一定数に達すると、一度の入場で持ち帰れるサンプル品の点数が増える(最大10点)といった特典に結びついていく。ちなみに、出展企業側は、施設内の什器を1区画単位・2週間単位で借り、サンプル品を供給する。

このように「サンプル・ラボ」は、新製品をいち早く、しかもタダで試したいという欲求と引き換えに、持ち帰りの履歴も含め、様々な個人情報を提供することで企業側の欲求に応える相互関係によって成り立っている施設ということになる。観察してみると、ここには学生と思われる若い女性から若いカップル、小さな子供連れのファミリー、熟年女性のグループ、熟年夫婦など、実に様々な人たちが訪れている。入場者のなかには、おそらく「バーゲンハンター」ならぬ『サンプルハンター』がかなり多く含まれるものと考えられるが、彼らにとって重要なのは、タダでどれだけ価値あるものをゲットできるか、どれだけの「おトク」を体験できるかというところにあると見ることもできる。

それはさておき、生活者にとってこの施設は単純に面白い。新しい商品をいち早く、しかも自分が関心のある商品を選んで、タダで試せることには違いないからである。となれば、これは「サンプル・ラボ」へ出かけてモノを選び、それを試用してみること、さらにはアンケートに回答することまでもが一種の遊びになる。そういった意味では、これは「新商品」を媒介した新しい形のアミューズメント施設ととらえてみることもできるのである。





 

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