ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
4.1.2008
ラグジャリーな私生活空間〜次なるテーマ

イタリア発の「フレッテ」と言えば、ニューヨークではフォーシーズンズやウォルドーフ・アストリアといったラグジャリーホテルの客室で使用されているベッドリネンであるが、これは今やアメリカの百貨店のホームのMD(マーチャンダイジング)には不可欠のブランドになっている。また、これを核にするラグジャリーなベッドリネンは百貨店のホームカテゴリーにおける新たな訴求テーマになっている。このことにも象徴されるように、このところ、他人の目に触れることの少ない寝室空間にも、自分が満足のいく高い質と高いレベルの美を求める動きが高まってきていることを痛感する。

ニューヨークにある「DKNY」もこの点を刺激するMDを提案している。この店はデザイナーであるダナ・キャランのライフスタイルを提唱する店で、店は地階を含む3つのフロアで構成される。1階には婦人ファッション衣料のほか服飾雑貨やセレクトされた家庭雑貨が、2階には婦人ファッション衣料のほか、アートやファッション系の書籍雑誌のコーナー、ジュースバーが、地階にはメンズファッション衣料が展開されており、全体としてダナ・キャランによるセレクトショップの印象がある。

注目したいのは、2階に新たに開発された「ピュアDKNY」と呼ぶゾーンである。これは独立した部屋としての印象を感じさせるスペースで展開されており、その内容はダナ・キャランが自らの私生活のなかから発信する、ウエアとベッドリネンを中心に構成する新たなラインである。具体的には、やわらかく肌触りのいいハイゲージニットによるキャミソールドレス、繊細なレースがほどこされた軽いコットンリネンのはおりもの、コットンのレース編みのカーディガン、軽くやわらかなシルクのシャツドレス、ワンマイルウエアとしても活用できる、流れるようなシルエットのウールのジャケットなどが印象的である。価格はジャケットが275ドル、シャツが195ドル、ボトムが125ドルといったぐあいに、この種のものとしてはかなり高い。

「ピュアDKNY」の展開。

展開アイテムに共通しているのは、女性たちのプライベートルームと、その周辺で過ごす時間のなかでの、やさしく、優雅で、洗練されたくつろぎを演出するものである。そこでの切り口になっているのが、コットン、リネン、シルク、カシミアといった上質な天然素材にこだわること、そして色については、白、生成り、グレーなど、無口で、かつやさしいトーンを基本にすることである。また、キルティングやピンタックなどの装飾はあるが、決して饒舌さを感じさせることのない上品なやさしさにあふれたベッドリネンやブランケットの類も「ピュアDKNY」の世界観を見事に語っている。そこに感じるのは「極上のニュートラルライフ」とでも表現したい美的、感覚的世界である。

家庭を心地よく過ごせるリゾートとしてとらえる、あるいはストレスを解消するトランキル(心穏やかな)スポットとしてとらえる。その動きがラグジャリー志向と結びつき、私生活空間を新たなテーマに持ち上げていることに注目したい。




 

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