ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
9.10.2008
チョコレートをテーマに創造するテーマストア〜繁盛店を考える視点

味覚のうえでより高感度で、より創造性に富んだものを求めて、ニューヨーカーのチョコレート探究の旅は終わる気配を見せない。そんななか才気を感じさせるチョコレートブティックが複数登場してきているのだが、このところ注目されるのが、チョコレートを売ると同時に、チョコレートを主役にするスウィーツメニューを打ち出すカフェを併設する複合型の業態開発である。そしてそのホットな事例が「マックス・ブレナー・チョコレート・バイ・ザ・ボールドマン(Max Brenner Chocolate by the Bald Man)」(841 Broadway)」で、ここはこの一年のマンハッタンにおける一番の人気繁盛店に挙げることができるだろう。

ここは1996 年にイスラエルで二人の男性が起業したチョコレート専門店のアメリカでの一号店である。起業したうちの一人がそうであることから名付けられた「ボールドマン」にふさわしく、スキンヘッドの似顔絵風イラストが印象的なシンボルになっているストアフロントのエントランスを入ると、右手にギフトパックを含むチョコレートとチョコレートにまつわる雑貨を展開するゾーン、左手にちょっとしたイートインスペースがあり、その奥に壁に沿ってテイクアウトの注文カウンターが伸びる。このカウンターと通路を隔てて隣接する形でフルサービスのレストランゾーンが広がる。

このように店内は3つのゾーンで構成されているのだが、なかでもこの店の存在感につながる大きな役割を果たしているのがレストランゾーンである。店は外装、内装共に茶褐色のチョコレートカラーを基本に仕上げられており、150席のレストランゾーンの天井には、インテリアのシンボルとして設置された撹拌機から延びるチョコレートを運ぶパイプが走り、まさにあの「チャーリーとチョコレート工場」をイメージさせる演出がなされている。そして、テーマストア開発の基本公式を踏まえ、テーマ性は環境にとどまらず提供するメニューにも貫かれる。つまり、チョコレートをテーマにする、多彩な、しかも創作性を感じさせるメニュー、ここにこの店の特性がある。

チョコレートを運ぶパイプが天井を走るレストランゾーン。

この店の売り物であり一番の人気メニューになっているのが、チョコレートソースをかけ、チョコレートボールをあしらったクレープやワッフルとチョコレート・フォンデュである。また、創作性を印象づけるものには、チョコレートをトッピングしたチョコレートピザ、チョコレート・トリュフによる温かいチョコレート・スープ、それにカクテルについてはクリーミーチョコレートとバニラウォッカのマティーニといったものもある。勿論、パイやチーズケーキを含むケーキやアイスクリームなどのデザート、ベーグルを含む各種パンについてもチョコレートを活用したものを企画し展開している。

過去の事例に学習すると、テーマストアが繁盛を持続する鍵になるのが観光客を惹きつけることである。観光客は一見客であるが、絶えることなく一見客を引き寄せることもこの種の店にとって大切なことであり、観察してみると、この店には観光でニューヨークにやって来たと思われる客の比率が高いことに気づく。しかし、チョコレートカフェのような業態は観光客を抜きにしても繁盛を持続できるだろう。この業態が発信する『甘い誘惑』はリピート利用を永遠に生み出し続ける力を持つからである。





 

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