ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
9.3.2009
新たな出店フォーマットを細胞分裂型で創造する注目事例〜「プラザ・ビューティリシャス」

セルフスタイルであれこれと化粧品探しを楽しめることで、生活者と化粧品との関わりに新しい局面を拓いたのがソニープラザ、今のプラザである。商品構成の柱のひとつとなった化粧品は中高生にとってもこの店に出向く楽しみになり、その点では集客促進装置にもなっている。ローティーンの頃からそんな体験を重ねてきた女性にとって、ブランドに忠誠を誓いつつ、きっちりとした対面での接客で購買する百貨店の化粧品売場は鬱陶しいものに思える。『プラザ育ち』の女性にとって、いろいろと仕入れた情報をもとにマイペースで化粧品を見て回ることは習慣化されたエンターテイメントであり、その面白さの度合いはファッションを見て回るよりもはるかに高い。

そのことをとらえるなかで生まれてきた新たな業態が化粧品卸の井田両国堂による「MSセレクション」である。駅ナカ商業施設であるエチカ表参道に開発されたこの化粧品専門業態は、国内外の実に様々な化粧品ブランドを集積し、立地特性と相まって、女性たちの道草を誘い、ちょっとした発見による買い物を楽しませる存在になっている。セルフスタイルの化粧品専門業態を移動径路上になる場所に出店し、気軽な立ち寄り買いを掘り起こす。「MSセレクション」はそこに可能性があることを示したことで評価されるのである。

そういった事例に刺激された部分もあるだろう、プラザスタイルが化粧品を軸に構成するビューティー製品に絞った専門業態、「プラザ・ビューティリシャス」を新たに出店している。場所はエチカ池袋、先例と同じ駅ナカ商業施設で、多様なプロフィールの女性の気軽な立ち寄り型の購買の獲得を意図している。店舗面積は約66uで、プラザの柱のひとつになっている化粧品&ビューティー製品のMDゾーンを専門業態として独り歩きできるよう抜粋、編集した印象を受ける。しかしその一方でこの店にはプラザにはない要素も注入されており、専門業態としての存在価値を高めている点が注目される。

エチカ池袋に出店した「プラザ・ビューティリシャス」。

そのひとつがオーガニック&ナチュラルコスメの品揃えの充実である。例えば、アメリカのオレゴン州発のもの、スパの発祥の地とも言われるモロッコのもの、フランス生まれの肌にも地球にも優しいエコブランド、ニュージーランド発のもの、ギリシャのアテネの小さな薬局発のもの、スイスなどの自然派化粧品として歴史を持つもの、日本人の肌に合わせて作られた国産ブランド等々、その集積度は「ここだけ」を実感させる。この店は化粧品専門業態としての専門性を、このところ時代の機運としても高まってきているオーガニック&ナチュラルに求めているところに特色がある。メイクアップアイテムも含んで化粧品にオーガニック&ナチュラルを志向する女性にとって、ここはデスティネーションストアと思える存在であり、見方を変えると、立ち寄り型の購買だけではなく、わざわざここを目指して出向く価値を感じさせる。

新規出店は小売店企業にとって、既存店を伸ばすことと並ぶ成長への両輪である。その新規出店で重要なのは、可能性のある立地を探り出し、時には創造し、その立地にふさわしいフォーマットを開発することである。このところ日本の有力小売店企業の間でこうした点を踏まえた新たな成長資源開発への挑戦が見られ、そこには彼らが展開する既存業態に比べると「小型」であるという、興味深い共通項を読み取れる。「プラザ・ビューティリシャス」はそういう視点からも注目できる事例である。





 

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