ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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1.24.2011
SC向け婦人服飾雑貨専門店を新たな成長資源に〜ヘンリ・ベンデルに学ぶ

2009年秋、ニューヨークの洗練を代表する存在であった大型高級ファッション専門店、ヘンリ・ベンデル(Henri Bendel)が、婦人服の展開をやめ、婦人服飾雑貨と化粧品の店に方向転換した。実績も歴史もあり、上顧客もいる店が大胆な方向転換をするということで、これは近年、強く印象に残る方向転換である。新ヘンリ・ベンデルを歩いて改めて痛感するのが商品における独自性である。そもそも婦人服飾雑貨と化粧品の店への転換を可能にしたのが、それぞれについての「高い評判」である。特にヘンリ・ベンデル・ブランドによるオリジナリティのある婦人服飾雑貨アイテムの人気はこれまでのベンデルの強みになってきており、ファッションアクセサリーからバッグや小物に至るまで「華美・華麗」が趣味性の軸として通っている。

方向転換前のヘンリ・ベンデルは全米にニューヨーク5番街の1店舗のみの存在であったが、方向転換後、昨年来、全米での新規出店を急ピッチで進めている。といっても5番街と同じ店を出店するわけではない。4,700uの5番街店を旗艦店に、ここから、SCへの出店を意図した、より小型の婦人服飾雑貨専門店としてのフォーマットを孵化させているのである。こうしてみると、ヘンリ・ベンデルの5番街店の方向転換の意図がよく見えてくる。それはSCへの出店による多店舗展開を視野に入れたうえでの転換であり、そのさらに背後には、ヘンリ・ベンデルを、規模を求めることのできる事業にするという成長ビジョンがあるということだ。婦人服飾雑貨専門店の開発はそれらを擦り合わせたところに求め得た答えなのである。

SCに出店したヘンリ・ベンデルの婦人服飾雑貨専門の小型店。

新たな出店フォーマットとして開発されたヘンリ・ベンデルは店舗面積が300〜400uといったところで、SCの標準的区画に対応できる、その点からすれば出店が容易なスペース規模である。その規模との擦り合わせもあって化粧品と靴の扱いはない。化粧品はSC内ではアンカーストアである百貨店に対抗するのは難しいし、靴はバックヤードも含めるとより広いスペースが必要になる。そこで展開アイテムは、バッグ、革小物、化粧バッグ、ファッションジュエリー、スカーフ、ルームフラグランス、ペットファッションに設定したフォーマット開発を行っている。店舗デザインはベンデルのアイコンであるブラウンのストライプをアクセントにして、ブランドを強調するうえでも効果を上げている。価格的には手頃なものからベター、あるいはブリッジに相当するものまでかなり幅があり、また、華美・華麗の趣味性がMDを特徴づけていることから、顧客のクラスならびに年齢幅は広いものと考えられる。

SC内の小型にまとめられたヘンリ・ベンデルを見ていると、同じような性格の店がないことに気づく。バッグの店はある。ファッションアクセサリーの店もある。婦人靴の店もある。婦人服飾雑貨についてはアイテムを絞ることで様々な専門店が成立している。しかし、婦人服飾雑貨の複数のアイテムを束ねたベンデルのような婦人服飾雑貨専門店は意外にも見当たらないのである。SCの中ではそれは百貨店の領域として棲み分けがなされてきたのかもしれないが、オリジナリティのある商品と明快な趣味性を特色にするベンデルには専門店として十分な魅力があり、また、5番街に1店舗しかなかったわりにはヘンリ・ベンデルのブランド知名度はきわめて高いこともあり、大きな可能性を感じるのである。




 

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