ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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2.7.2011
「よくできた普段の食べ物」〜食における最重要トレンド

最近の注目の人気繁盛飲食業態に、朝食、それも典型的な洋朝食メニューの提供を特色にするレストランがある。そのひとつが「世界一の朝食を作る」と言われ、世界的にも注目を集めるオーストラリア人シェフ、ビル・グレンジャーによるカフェ「ビルズ」である。アイコンになっているメニューが独自のレシピによるスクランブルエッグとパンケーキ。厳選された卵とフレッシュクリーム、塩、バターのみというシンプルな材料で作られるスクランブルエッグは、素材そのものの風味が生きた味わいと滑らかな舌触りに、シンプルな料理だからこそ実感できる技とセンスがある。また、「リコッタパンケーキ」は、ふんわりとした食感とリコッタチーズの濃厚さの融合がまさに未体験の驚きを感じさせる。なお、「ビルズ」は鎌倉の七里ケ浜店に続いて、昨春、横浜赤レンガ倉庫に2号店を出店。

「ビルズ」と並ぶもうひとつの注目店がハワイ発の「エッグスンシングス」原宿店である。ハワイでは、朝に限らず、昼や夜でも朝食メニューが食べられる店として知られているが、2フロアで構成される明るくアットホームな雰囲気の原宿店でも朝食アラカルトを中心としたメニューが柱になっている。やはり名物メニューがパンケーキで、パンケーキ3枚と肉卵メニュー(ベーコンエッグス、ソーセージ、ビーフステーキなど)との取り合わせがポイントになっている。また、この店のもうひとつの名物メニューがオムレツで、定番的なものから、多種類の野菜をミックスしたものやターキーベーコン&トマトとチーズといったこの店ならではのものまで、いろいろなオムレツを楽しめる。また、オムレツの付け合わせにパンケーキ3枚といった組み合わせもある。アメリカンスタイルの朝食にふさわしい重量感のある食事であるが、「こんな取り合わせもあるの!」といったことも含めて新しい発見がある。

「エッグスンシングス」原宿店。ベーコンエッグスとの取り合わせ。これで1,300円。

パンケーキ、スクランブルエッグ、オムレツ・・・・朝食とはごく日常的なものだが、これがとても美味しいこと、そして、気負いのない日常の空気感の漂う店内で心からくつろいだ気持ちで味わえること。両店に共通しているのはこれが人気のポイントになっていること。そしてここで読み取っておきたいのが、今さら新しくもない平凡な食べ物が生活者を刺激していることだ。つまり、味覚を探究する方向が馴染みの食べ物に向いてきており、そういった「当たり前のもの」が「よくできている」ことに感動を見出している。既にハンバーガーもその対象になっているが、「よくできた普段の食べ物」は食における最も重要なトレンドになろう。いや、このこと、食に留まらず、商品分野を広げて普遍化して読むことができるのである。




 

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