ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて

11.3.2011
プライベートライブスウエアで新たな購買を掘り起こす
〜アメリカン・イーグルに見る新事業資源開発

アメリカでは90年代に入ったあたりからティーンのファッション市場が発展を続けてきている。実際、オシャレに熱心なティーンたちはSC(ショッピングセンター)に出かけるのが好きで、このことと歩調を合わせるようにティーンを対象にするファッション専門業態のSCへの出店が活発になってきた。この10年のSCにおける顕著な変化のひとつに、全体に占めるティーンファッション店の比率の増加があり、このことがティーンの来館をさらに高める要因になっている。ところで、現実に買い物をする先として支持されている代表的ティーンファッション店には次のようなものがある。オールド・ネイビー(低価格の日常カジュアル)、パックサン(サーファーやボーダーのファッション)、ホット・トピック(パンクファッションの集積)、ホリスター(サーファー感覚のファッション)、それに、ティーンを含んでやや年齢が上の大学生男女を中心に高い支持を得ているのがアバクロンビ&フィッチ(A&F)とアメリカン・イーグル・アウトフィッターズ(AE)である。

さて、成長を続けてきているティーンファッション店であるが、成長にもやがて限界は訪れる。出店先となるSCには限りがあり、歳月の経過のなかで出店し尽くすことになる。となれば、成長策は既存店の増収を図ることだけになり、これで持続的成長を図るのは口で言うほど簡単ではない。となれば、次なる新しい事業の開発が課題になる。そんななか注目したいのがAEの新しい取り組みである。

マンハッタンではタイムズスクエアに「AE&エアリー」の複合店(2,300u。4フロアで構成)がある。「エアリー」はその最上階、3階で展開。室内着の展開。

AEは最新のトレンドを適度に取り入れた親しみやすいトラディショナル感覚と、こなれた買いやすい価格に魅力のあるブランドだが、ここでは「エアリー(Aerie)」という、13歳から25歳までの若い女性をターゲットしたプライベートライブスウエア、つまり、下着と室内着の店を展開しているのである。対象とする顧客の年齢幅はあるが、核になるのは女子大生で、それはAEの顧客と重なり合う。これは重要なポイントである。

ファンデーション下着(ブラジャー、ショーツ)。室内着とパジャマを兼ねたウエア(Tシャツ、キャミソール、ボクサーパンツ、パジャマパンツ、レギンス、カーディガン、フード付スウェット)。バスローブ。スポーツブラ、タンクトップ、フード付スウェット、ダウンジャケット、ダウンベストなどのフィットネスウエア。オリジナル化粧品。これらが「エアリー」の商品カテゴリーと主要アイテムで、ナチュラルな素材使いをベースに、その時々のトレンドを加味した自然体で飾り気のなさがテイスト上の特徴になっている。

面白いのは、それぞれ違う柄のブラとショーツや、タンクトップとパジャマパンツ、スウエットシャツとボクサーショーツの組み合わせなど、ミックスコーディネートを勧めていること。ブラとショーツ、パジャマのトップスとボトムスなどをあえてセット提案しないことで、インティメイトアパレルをファッションとして楽しむという新たな提案をしているのである。価格はAEらしく、ボクサーショーツ15.50ドル、フード付スウェット39.50ドルと手頃なものとなっている。なお、店内環境も十分に「プライベートライブス=私生活」を反映しており、ブラジャーを展開するコーナーは寝室のイメージで、チェスト風の什器が使われている。また、化粧品のコーナーはパウダールームのイメージで、中央に洗面台や鏡が置かれ、商品を実際に使ってみることができるようになっている。

「エアリー」は当初、ウェブショップを中心にした展開であったが、現在はAEとの複合型で出店するほか、SCへ「エアリー」単独店も数多く出店しており、その広がりが注目されている。こうしてみると、「エアリー」がAEの新たな事業資源として成長に寄与することは間違いない。鍵はAEの現顧客を資源に、生活上必要な異なるカテゴリーの衣料を打ち出すことで、彼らの購買をものにしようとしていること。そして、勿論、そういった他店でなされてきた買い物をものにするだけの魅力ある商品を展開していること。参考までに、AEは2012年春に原宿に出店予定で、それはこの「エアリー」とAEの複合型店になると言う。要注目である。




 

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