ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて

4.1.2006
リサイクル・シック

「ミックシィプリジック(MXYPLYZYK)」と言えばNYを代表するグッドデザインの生活雑貨店で、NYで定点観察のひとつにしている店である。少し前のことだが、ここで興味をそそられる商品と出会った。廃棄されるLPレコード盤を活用し、これを成型してボウル状にしたものである。針のたどる細かい溝はそのままデザインの要素になり、中心のラベル部分が底になることでユニークな美的アクセントが生まれている。果物を盛るなど様々な使い方を想像できるが、こんなボウルがテーブル上に存在するのも楽しいことである。一枚38ドルという価格はボウルとしては立派なものだが、ここに感じられるウィットには理性を失わせるだけの力がある。

リサイクルと審美性を結びつけ魅惑的な商品を創造する。この時代にあって重要なモノ作りにおける視点であるが、その模範解答を見るような展覧会が先月、人気の雑貨店「デルフォニックス」の渋谷パルコ店で催された。この店の魅力は、ステーショナリー、デスクアクセサリーを中心に、オリジナルも含めて趣味のいいヨーロッパテイストの雑貨を国内外から集めて展開するところにあり、店内奥には小さなギャラリースペースをセミクローズドな形で設けている。展覧会はそのスペースを使って行われたもので、テーマとして取り上げられたのが、フィンランド発のリサイクル雑貨ブランド「SECCO(セッコ)」である。

「セッコ」展から。左下に見えるのがLPレコード盤のボウル。

「セッコ」はコンピューターや家電製品、携帯電話、タイヤチューブなどの廃棄物を素材に、廃棄物処理センターや工業デザイナーなどと組みながら、新たなモノとしてデザインし、再生するところに特色を持つブランドである。「セッコ&ザ・トレジャー・オブ・ウエイストランド」と名付けられた展覧会では、日本未上陸のアイテムや新作も含めて多彩な商品が展示、販売された。最も有名な、パソコンのキーボードのパーツを使ったヘアゴムやキッチンマグネットやピアス、タイヤチューブを切って縫い合わせたバッグやポウチ、レコードを切ったり折り曲げたりして作られたCDケースやフルーツボウルやバッヂ、パソコンモニターのガラスを溶解して再成型したキャンドルポット、テレビのリモコンや携帯電話のボタンをビーズのようにつなげて作ったネックレスやピアス、洗濯機ドラムを縦に切って枠を付けたトレイ・・・・。

廃棄物を利用して、それに創造性の才や遊び心を持ち込み、美的価値を持つモノに仕立て上げる。キーワード的表現をするなら「リサイクル・シック」。時代感覚として注目しておきたい。





 

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