ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて

4.10.2007
ワンポイント・ビューティーサービスが利用価値を刺激し、利用頻度を高める

新宿ルミネの8階にオープンしたヘアサロン「マニ・クレアーレ」は、カット、パーマ、カラーリング、メイクアップなどごく一般的なメニューを提供する一方で、短時間・低料金による「クイックメニュー」を豊富に用意することで支持を得ているヘアサロンである。通路に対してオープンになった、ヘアサロンとしては珍しい環境デザインによる店舗は約80・の面積を持ち、客席は9席。このオープンな環境と「クイックメニュー」の気軽さがうまく融合している。ちなみに「クイックメニュー」は12種類用意されており、そのなかには、前髪のブロー(5分・500円)、前髪のカット(10分・1,000円)、巻き髪カール(15分・1,500円)、ヘアアレンジ(15分・1,500円)といったものがある。

ヘアサロンへ行くのは2ヶ月に1度でも、前髪だけは月に1度程度、自分で切るといった女性は多く、それだけでもこのような「クイックメニュー」には新たな需要を開発する力がある。また、アフターシックスや翌日の休日などに備えて巻き髪カールやネイルカラーチェンジをするといった需要も大きいに違いない。であればこそ働く女性が立ち寄りやすいターミナル駅の駅立地であることが価値になるのだが、注目したいのは、こういった「クイックメニュー」を打ち出すことが、ヘアサロンとのつき合い方について女性たちに気づきを与え、「短時間の立ち寄り型利用」という新たな一面をもたらしていることである。

左が「マニ・クレアーレ」、右が「イーズ・ミュゼ」。

一方、ららぽーと柏の葉に、「フェイシャルエステティックが555円から」という超低料金をうたうことで近隣の主婦層に人気のエステティックサロン、「イーズ・ミュゼ」がある。軸になっているのは、50分で5,250円・6,300円、60分で9,450円・12,600円といった本格的な内容によるフェイシャルやボディのためのエステティックやマッサージのメニューであるが、注目したいのは、555円・888円・999円という3つの料金による超低価格メニューである。555円のメニューは漢方生薬を使用した美白パック、888円のメニューはキシリトールの成分を使用して目元を中心にケアするアイパック、そして999円のメニューには、肌の状態をチェックした後に泥パックや保湿パックを行うフェイシャルエステティックと、脚のリンパの流れをよくするオイルマッサージの2種類がある。いずれも所要時間は30分程度である。

超低料金メニューは気軽さゆえに利用頻度を高め、結果的に年間を通してみれば一人当たりの利用額を結構なものにする。それと同時に、本格的なヘアカットやエステメニュー利用へのテイスティングとしての効果を持つことも見逃せない。それはともあれ、ワンポイントに絞って、これを大胆なほどの安さと早さで提供することがビューティーサービスについての利用意欲を刺激し、これまでにない需要を掘り起こしていることは間違いない。新たな価値の提供が需要創造につながるということでの考えさせられる事例である。





 

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