ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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7.17.2008
『時々、体内浄化食』〜新しくリビングフードに注目

体内に摂取するものに神経を払うことで心身の浄化を求める動きが生活者の間に広がり、定着するなかで、玄米や雑穀を主食とし、精製されたものや動物性食材を極力摂らないマクロビオティックをはじめ、卵や乳製品を含むいっさいの動物性食材を摂らない厳密なベジタリアンであるビーガン、野菜なら根や葉まで、穀物なら精製せずに丸ごと食べるホールフードなどの考え方に基づく食事は、特に幅広い年齢層の女性たちの間で支持を獲得し、今やごく日常的な食の選択肢として意識できるものになっている。

そうしたなかで、このところ徐々に関心を高めている新たなテーマが「リビングフード」と呼ばれるものである。この新たな食の考え方の前提はマクロビオティックにあり、従って「リビングフード」では肉や魚は勿論、卵、乳製品、精製された塩や砂糖や穀類はいっさい使用されない。主に使用されるのは野菜や果物、ナッツ、豆類、海草類といったものである。そのうえで、これらの食材を48℃以上の熱を加えずに調理するところに最大のポイントがある。と言うのも、「リビングフード」は、体調を整える働きをする食物酵素をそのまま体内に摂り込むところに基本的な考え方があり、食物酵素は一定温度以上の加熱で破壊されてしまうため、食材をほとんど生に近い状態で食べることを推奨するものなのである。つまり「リビングフード」の「リビング」には、食材が生きた状態のままである、という意味が込められている。。

完全非加熱の6種類の料理で構成される「ベジ・パラダイス」のリビングフード・ランチ。温かい雑穀ご飯または天然酵母パンとミニスープが付いて1,470円。

このリビングフードの考え方に基づく料理を提供するレストランに、昨秋、東京・代々木上原の住宅街の一画にオープンした「ベジ・パラダイス」がある。ここで提供されるランチを形成する完全非加熱の料理には次のようなものがある。人参サラダ。ドライトマトと松の実で作った「肉」を生のマッシュルームに詰めたスタッフドマッシュルーム。アーモンドとヒマワリの種で作られた、言わば「ツナもどき」サラダ。柿とヒジキのゴマあえ。浅漬け風の大根のスライスに、椎茸と松の実で作った「肉」を挟んだ大根の餃子。大根とワカメの酢の物。さらに興味深いのは、スウィーツにも非加熱のものが用意されていること。例えばクッキーなら、ナッツやドライフルーツ、雑穀類、つぶした果物、メイプルシロップなどを混ぜ合わせて薄く伸ばし、乾燥させただけのものなのだが、食べてみると、味も食感も確かにクッキーと表現できるものであることに驚かされる。

みずみずしい心身を維持したいという思いを背景に、様々な、未体験の食の考え方を体験してみることが、女性生活者にとって一種の遊びになっている時代である。マクロビオティックやビーガンやリビングフードの考え方に基づく食生活に真摯に取り組む生活者がいる一方で、そういった食の考え方に関心を持つ、より多数派の女性たちは、それらをふだんの食生活のなかで時々摂るべき『体内浄化食』と性格づけている。それは食探究を存分に楽しむためにも、定期的に摂ることを意識する食事なのである。そして「リビングフード」もその新たな選択肢になりつつある。『時々、体内浄化食』。この欲求をどう汲み取っていくかに食の世界で新しい可能性を探る鍵がある。





 

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