ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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9.3.2009
ボヘミアンスタイルに考える

今年、ボヘミアンスタイルが高級店から低価格店まで、クラスやグレードを問わずファッション小売りを横断する訴求テーマとなり、街角の着こなしでも鮮度を感じさせるものになっている。ちなみにボヘミアンスタイルには大きく3つの要素がある。1にフォークロア(民俗服)、ペザント(農婦服)、ロマンティックといった視点からの、風土に密着したデザイン感覚を要素に取り入れていること。2にジプシーの衣裳の持つ要素。例えば、長めでギャザーがたっぷり入っている、二段重ね・三段重ね、フリルがたくさんついたといった特徴を持つジプシー・スカートなどの要素。3にボヘミアンが伝統や習慣にこだわらない自由奔放な生き方をする人々をも指すように、自由で力みがなく、既成概念にとらわれない雰囲気を持つこと。

東京の街頭を観察してみると、着こなし表現にこうした要素があふれかえっていることを痛感する。まず、アイテムでは、ベアトップのロングワンピースや何層にも段になったティアードスカートなどロマンティックな表情のもの。次に、インドやアフリカの木版更紗、アフリカ風絞り染め、インドのミラー刺繍、東欧の刺繍やレースワーク、ネイティブアメリカンに伝わるチマヨ織り、メキシコのサラペ織りなど、多様な国や民族に伝わるハンドクラフト(もしくはそれに似せたもの)を施したファブリック使い。そして、ワンピースやチュニックのキモノスリーブ、髪に巻かれたスカーフ、ネイティブアメリカン風ヘアバンド、ネイティブアメリカンのモヒカンブーツからアレンジしたフリンジ付きブーツといったぐあいに、世界の多様な民族や部族に伝わってきた布や衣服のディテール。全体としてちょっぴり土臭く、温もりがあり、やさしくロマンティックな雰囲気を着こなしにもたらしている。

ボヘミアンスタイルをクローズアップする
ファッション店のウインドウ(左)と街頭での
着こなし例(右)。

ところで、時代が大きく動き、新たな生き方や生活観を模索する情況になると、人々の着こなしできまって浮上してくるのがこのボヘミアンスタイルである。記憶に残っているのが1990年代前半のバブル崩壊後の大ブームであるが、さらに遡ると、1960年後半から70年代初めにかけての、若者による反体制革命の時代にもこのスタイルがホットトレンドになったことを思い出す。それは当時台頭してきたヒッピーの生き方に影響を受けたもので、ヒッピーたちはアメリカにおけるネオ・ボヘミアニズムの起源になったのである。今なぜボヘミアンスタイルなのか。その背後には時代性や時代感覚と結びつく実に多様な要因があるのだが、過去に学べば今日の情況はボヘミアンスタイルを浮上させておかしくないのである。





 

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