ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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4.1.2006
クロス・セックス型ファッション店と新たな店作りトレンドと

蔦川敬亮です。先日、東京・二子玉川の玉川高島屋SCを歩いていて、興味深い店作りに出会いました。それはこのSCに新たに導入されたバナナ・リパブリックで、通路に対して2つのエントランスを持っているのです。ひとつがメンズのもの、もうひとつがウイメンズのもので、それぞれ独立した別個の店舗の構えをしています。しかし、中に入ってみると、奥の壁際のゾーンで両者がつながって往来できるようになっているのです。ちなみに、つながっているゾーンのちょうど中間に位置するところにレジが設けられています。

2つの構えを持ちながら1つの店ということになるのですが、これ、実は今アメリカに読み取れる新しい店作りトレンドなのです。その印象的な事例のひとつが、全米に800を超える店舗を展開するランジェリー・チェーンのヴィクトリア・シークレットです。ここではランジェリーと同時に、数年かけて育成してきたメイクアップ製品やフレグランス製品などの化粧品のMDユニットも重要な売り物になっています。「ヴィクトリア・シークレット・ビューティー」と名付けられたこのMDユニットは、商品構成面でも幅と奥行きがあり、ヴィクトリア・シークレットの店内で大きな面を持つものになっています。

このようにランジェリーと化粧品という2つの主語があることを踏まえ、このチェーンはあるSC内の店舗をリニューアルし、ヴィクトリア・シークレットもヴィクトリア・シークレット・ビューティーも、それぞれが通路に面した構えと独立したエントランスを持ち、それでいて店内奥では互いに往来できるように融合した店にしたのです。つまり、ランジェリーの顧客は化粧品へ、化粧品の顧客はランジェリーへと回遊でき、ランジェリーから化粧品の買い物を誘うだけでなく、通りがかる女性の化粧品への興味を喚起することで入店と衝動買いを促すことができるわけです。これはきわめて効果的な店作りです。

トレンドを語るもうひとつの注目事例がギャップです。アメリカのギャップ・ストアでは、「女性が直接体につけるファッション」をコンセプトにする、「ギャップボディ」と名付けたMDユニットを育成してきています。このユニットは、1にブラジャー、パンティなどの肌着、2にスリープウエア、ラウンジウエア、3にエクササイズシーンなどを意識したテリークロスのスウエッツ、スポーツブラ、タンクトップなどアクティブウエア、4に水着、5にオードトワレ、ボディミストなどのフレグランスと5つのラインで構成され、女性が必要としながら、しかし、同店がこれまで扱ってきていないカテゴリーの導入によって、プラスアルファとなる新たな購買を獲得しようという意図の読めるものです。この「ギャップボディ」について、最近、SC内であれ路面型であれ、これをギャップ・ストアと隣接する形で構える店作りを行っているのです。また、出店先によっては店の奥で互いに往来のできる設け方をしています。

玉川高島屋SCのバナナ・リパブリックの構え。中央に男女マネキンによるウインドウを配し、左がメンズストア、右がウイメンズストアになっている。

話を玉川高島屋SCのバナナ・リパブリックに戻します。この場合の2つの構えを持つ店作りには、メンズ、ウイメンズを同一スペースで展開するクロス・セックス型の店作りへの問題提起があります。買う側の立場からするとクロス・セックスMDはもはや魅力的なものではありません。テイスト、デザイン性が共通するからといって男女を顧客にする店作りをするのは店側の論理に思えるのです。勿論、生活者の側からすれば、夫婦やカップルで一緒に買い物を楽しめるということで、あるいは、しばしば女性がメンズ物のなかに買いたいものを発見できるということで、歓迎すべき点はあります。しかし、ほぼ四半世紀にわたってクロス・セックス型の店とつき合うなかで、生活者の気持ちは明らかに次の段階へと移ってきています。

そこで特に問題になるのが、その商品が紳士物なのか婦人物なのかということで混乱がつきまとい、わかりにくい、探しにくいということです。要はもっとわかりやすく、買いやすい店を期待したいのです。いや、それにとどまらず、男性客も女性客もそれぞれに、そこが「自分の店だ」と思えることで、一回の来店でより多くの買い物をしようという気分になる効果もあると思います。このように男女を別の店にするというのは意味のあることなのです。玉川高島屋SCのバナナ・リパブリックの店作りはその点での優れた着地を感じさせるのです。顧客の買い物経験の積み重ねは店作りに進化を要求するものですが、そのことがクロス・セックス型の店作りでも問われているような気がしてなりません。





 

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