ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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7.11.2006
今最もスタイリッシュなナチュラルウォーターに読むマーケティングの極意

蔦川敬亮です。何事においても長期間にわたるリピーターは歓迎されるものですが、ホテルもそうですね。私がNYでよく利用するホテルでは、時々、チェックインした部屋のテーブルの上に、フルーツとチーズを盛り合わせたプレート、それにボトルワインを置いてあることがあります。そばに添えてある支配人名の手紙を読んでみると、このホテルを贔屓にしていることへの感謝の印だということがわかります。

このホテルでつい最近も同じようなもてなしを受けました。ところが、フルーツ&チーズプレートは同じなのですが、ボトルワインがありません。そしてその代わりといった雰囲気で、化粧水のようなきれいなボトルが置いてあります。写真をご覧ください。このアーティスティックな風情のガラスのボトル、手にとって記載された文字を見て、はじめて、ノルウェイ発の「ヴォス(VOSS)」というナチュラルウォーターであることを知りました。瞬間的に売れることを直感させる商品で、NY滞在中、いろいろと調べてみると、これが今一番のホットなナチュラルウォーターになりつつあることわかりました。

「ヴォス」はノルウェイの二人の若者が起業し、開発したもので、そこには2つの意図があります。1に、豊かな、汚染されていない自然に恵まれたノルウェイはナチュラルウォーターの宝庫で、最上の品質のものがあるに違いないということ。2に、欧米などで出回っているナチュラルウォーターは容器が美的魅力に乏しく、この点を踏まえた満足度の高い提案に可能性があること。つまり、「ヴォス」開発の背景には、品質と様相、これら2点について突出したものを創造すれば、飽和状態にあるナチュラルウォーター市場で新たなシェアを獲得できるビジネスチャンスがあるのではないかという狙いがあることを感じ取れます。

これを踏まえて「ヴォス」は2つの特色を持って企画されています。まず、氷や岩に囲まれてまったく汚染されておらず、また、地下水の水圧を利用して噴出してくることから、空気や汚染物質に触れることなく汲み取ることができる「アルテジャン(artesian)・ウォーター」であること。次に、元カルバン・クラインのクリエイティブディレクター、ニール・クラフトによる容器デザインであること。このように、高品質であることと、既成のナチュラルウォーターのイメージを超越した、むしろ化粧品を想起させる円筒形の容器が結びつき、『スーパー・プレミアム・ナチュラルウォーター』という、この世界にこれまでに見られないブランド・パーソナリティーを創造することに成功しているのです。

ところで、この商品、食品スーパーやグローサリーストアで手に入るかというと、そうはいきません。一級のレストランやホテルの部屋に置いてもらい、あるいは、限られたごく一部の洗練されたグルメ食品専門店で扱ってもらい、これをメディアにして市場への浸透を図っていく方法をとっているのです。最上の品質の水を、最上の容器で、最上質の顧客に飲んでもらうこと。これがマーケティング戦略の基本的な考え方なのです。ちなみに「ヴォス」では、今のところこうした方法で注目度を高め、ネットでのお届け販売で固定的な顧客を獲得していくやり方をとっています。とは言うものの、800mlが12本で30ドル、375mlが24本で36ドルと、価格はそう高いものではありません。

「ヴォス」のたたずまいは、レストランであれ、オフィスの会議テーブルの上であれ、ホームパーティーであれ、そこに存在することでプレミアムな雰囲気を生み出すことは間違いありません。このように、ナチュラルウォ−ターが巷にあふれているなかで、だからこそ、特別な魅惑を提供すれば商機になるということを教えてくれています。普遍化して整理すれば、平凡になっているモノ(あるいは平凡に思われるモノ)に、とびきり非凡に見えるインパクトを与えることが、新たな需要の創造につながるということです。





 

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