ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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1.10.2008
ホームパーティーが消費の巨大テーマになる

蔦川敬亮です。このところマンション生活者やごく一般的なスペースの家に住む生活者の間でホームパーティーを開くことが活発になっています。これまで日本では、居住空間に恵まれないがゆえに、欧米のようにホームパーティーが暮らしに根付くことはないとされてきましたが、少なくとも大都市部においてはその見通しが誤りであることを認めざるを得ません。居住空間の狭さということでは、高層住宅に住むマンハッタン生活者も似たようなものですが(100平方メートル前後のアパートが多い)、それでも彼らは結構頻繁にパーティーを開きます。招待されて出かけてみると、20名近くのゲストが談笑しているといったぐあいに、広いスペースがなくともパーティーは開けるものだということを教えられます。

こうしてみると、ホームパーティーは『開けるかどうか』というスペース上の条件にかかっているのではなく、『開く気持ちがあるかどうか』という、生活者個々のアティテュード(生活姿勢)にかかっていることに気づきます。つまり、ホームパーティーが活発になるということは、自宅を舞台に集うことに喜びと充足感を見出すアティテュードを持つ生活者が増えていることを意味しています。聞き取ってみると、パーティーを開く動機や目的は実に様々で、地方の名店から取り寄せた練り物でおでんを作って披露する「お取り寄せパーティー」もあれば、大型画面テレビのある家では、酒を飲み、語り合いながらサッカーなどのスポーツ観戦を楽しむというものもあります。

よく観察してみると、表向きの動機や目的とは別に、ホームパーティーには、生活を自慢する場、自己表現としての家庭生活を披露し、発表する場としての意味があることに気づきます。センスや趣味や所有するモノの発表というホンネの動機が見えるのです。ちなみに、ライフスタイルとは、「その人の流儀、生活姿勢、所有物などによって特徴的に表現された、首尾一貫した個人の生き方」と定義できるのですが(この定義を知らないまま使用している例が多いのは困ったものです)、ホームパーティーはまさにライフスタイル発表の場であると言えるのです。だからこそ、インテリアにこだわって投資をし、趣味を究めることにも意義があるわけで、何にせよ、人は発表の場を得ることでそれに金と時間をかけるものです。

そうしてみると、ホームパーティーは消費拡大の大きな力になっていると見ることができます。実際、少し引いた位置から見ると、ホームパーティーにつながる需要は数多く考えられます。質の高さや様相美を満たすクッキングウエア、キッチンウエア、テーブルウエアが求められているのもそうだし、気の利いた、カンバセーションピース(会話の促進剤)になる手土産への関心の高まりもそうです。そして勿論、ホームパーティーに密着した、パーティーをサポートし、より魅力的に演出する商品やサービスが消費意欲を喚起する新たなテーマになることも見逃せません。プロダクトデザイナー、フィリップ・スタルクによる「LUX by Starck」なる、100%リサイクルできるプラスチックでできた軽量のテーブルウエアなどはその点を刺激する新商品で、パーティーシーンで使用するにふさわしいスタイリッシュな様相と機能の見事な融合が魅力的です。

「LUX by Starck」の店頭での展開。

このように、百貨店あたりでは、高い味覚でゲストをもてなしたいとする、ホームパーティーを開く側の気持ちを高揚させ、刺激するデリの提案が期待されます。それはいわゆる「デパ地下」が刺激的であるための次なるMDテーマでもあり、特に、高度な味覚のフィンガーフードや、ミニチュアの造形的な美しさを持たせたオードブルに新しい提案が欲しいのです。いや、それを超えて百貨店に期待されているのは、ホームパーティーのいっさいをコーディネイトするサービスではないでしょうか。

ひるがえって、現代生活者は、様々な人と集い、体温の感じられる交流のできる溜り場を求めています。それは欲得を抜きにした絆作りとも言えるもので、平易な表現をすれば、「より多くの人々とつながっている」という自覚は、安心感にとどまらず、日々の暮らしの豊かさにもなっています。背後要因は数多くあるのですが、「絆」は現代生活者が最も欲しているもののひとつなのです。そしてそれはホームパーティーの活発化の動きに共通している要素です。ホンネをさらに突き詰めると、「絆」への希求という結論に行き当たる。この結論を得ると、新たにいろいろなことが見えてくると思うのです。

年の初めにあたって、消費につながる最も重要なキーワードが「絆」であることを強調しておきたいと思います。





 

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