ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
7.11.2006
価格表示を視覚を刺激するVPとして消化する

このところ、比較的高級な商品を扱うファッション店などでも、一つひとつの商品について価格を大きくわかりやすく明示する例が増えてきている。その背後には、すべての商品について、商品を見ると同時に価格を知ることができるコンビニで育った世代が既に30代、40代になり、消費の主役になってきていることがある。そしてこのことはまた、価格表示に次なる視点をもたらす。つまり、それを購買決定に導くうえでの「必要な情報の提示」という黒子的存在にとどめず、表舞台に出してみるということであり、価格表示に店頭におけるVP(ヴィジュアルプレゼンテーション)としての概念を持ち込み、これをどう美的に印象深く見せるかに工夫をするということである。

そんなことを考えるうえでの興味深い事例を「コンランショップ」に見ることができる。例えば、ガーデンパーティーのシーンを表現したトップスペースでのディスプレイに見るもの。人工芝を敷き詰めた中にガーデンテーブル&チェア、バーベキューグリル、パラソル、バスケットといったアイテムを配した風景は、親しい者どうしの、洗練された、それでいて気取りのないカジュアルなパーティーのシーンを描かせるが、このディスプレイをよく見てみると、いろいろな所に点々ときれいなグリーンのボトルが置かれている。このボトルはカジュアルなガーデンパーティーというイメージにふさわしくビールの空き瓶で、そこにはそれぞれ「パピーストゥール¥12,600」「アゴラテーブル¥378,000」といったぐあいに商品名と価格が記され、「値札」の役割を果たしているのである。

キッチンツールの売場での価格表示。

キッチンツールの売場で見るものも面白い。ここでは様々なキッチンツールを並べた什器の上に、天井から針金を使ってそれぞれのキッチンツールがひとつずつ吊り下げられている。ピーラー、レートル、ホイッパー、軽量カップ、ポテトマッシャー、チーズグラインダー、パスタメジャー‥‥と全部で20種類以上のキッチンツールが吊り下げられているのだが、これらすべての商品について、それぞれの針金部分に小さなクラフト紙製の紙コップが取り付けられ、ここにスタンプを使って価格が記されているのである。

コンランショップに見るこれらの例は、ディスプレイのイメージや商品の特徴、デザイン上の持ち味などをうまくとらえながら、価格の表示を実にコンランらしい美的メッセージのあるVPに仕立てている。それも単にシャレているというだけでなく、いずれも価格が大きく記されていてわかりやすい。価格という情報は、最も重要である一方で、最も退屈な情報でもある。しかしそんな退屈な情報を示すことも、ここまで踏み込んでみることで、その店や商品の持ち味を視覚的に伝えるものにできるのである。





 

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