ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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9.3.2009
ドライミストが『名物』スポットを創る

ここ数年、商業施設や公共施設のオープン空間で導入が進んできているドライミスト装置だが、これを最初に体験したのは、日中の気温が高温になるアメリカ・ニューメキシコのオープン環境の商業施設であった。見た目にはどんな効果があるのか疑問に思ったものだが、ドライミストが噴き出す小道は強い日差しの下でも涼感があり、快適だったことを記憶している。この装置はそれからさほどの時差なく東京でも見られるようになるのだが、これを逸早く2006年にオープンエリアに設け、以来、恒例のものにしてきているのが六本木ヒルズである。また、福岡のSC、キャナルシティ博多ではこれが運河を眺める水の風景とも一体になることで、環境に涼を提供する装置として効果を上げている。

渋谷のロフト前のドライミスト装置。一種のおもてなし装置として機能している。

ドライミスト装置はヒートアイランドにおける夏季のおもてなし装置として常識化する傾向にあり、完全屋内型の商業施設であっても、通りに接する屋外のエントランスエリアにこれを設ける例が次々に出てきている。そんななか、この夏、ごく小規模な路面店がこの装置を導入し、近隣で話題になっている。それは東京メトロの表参道駅をスパイラル方向に出た青山通りに面した所にある、「スモーク」という名の小さなタバコ店である。間口が狭く、奥行きのある店の間口の部分の天井に2基、ドライミストの噴出口があり、そこから常時、霧状のドライミストが出ている。店名にふさわしく『もうひとつのスモーク』が主役になっているのである。

「スモーク」。写真ではわかりにくいが、間口部分にある2基の噴出口からドライミストが勢いよく出ている。

言うまでもなく、タバコ店にはひっきりなしに客の出入りがあり、戸口を閉めておくわけにはいかないし、仮に閉めれば通りに対して閉鎖的になり、客の入店を阻害しかねない。ただし、戸口を開放しておけば、店内の冷房効率は悪くなり費用もかさむ。そこで、細かい粒子の霧が気化する際に熱を奪い、空気を冷やすドライミストの出番となる。客の立場からするとタバコの買い物は一瞬で終わるわけでその効果を実感するのは困難だが、1日店内にいるオーナーにとってこれは意義ある装置になるに違いない。また、通りに対して小さなオアシスとなるスポットを提供することでの社会的意義もあろう。いや、それ以上に大きいのは、この装置がアイキャッチャーになって、ひとつ買っておこうかということでの衝動買いを誘うことだろう。

ドライミストが入店促進のためにエントランスを開放する必要のある路面店において広がることを予感させる事例であるが、東京を歩いていて思うのは、これを導入している店が新たな『名物』スポットになっていることである。





 

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