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2013年6月13日開催

1.注目事象から

(1)ドレッシングアップの美/「華麗なるギャツビー」

◆今週末から公開される映画「華麗なるギャツビー」。1920年代の紳士淑女の華麗なクラシックの美をたたえた服装が見所。1974年にも映画化され、ファッション界で大きな話題に。ブルックスブラザーズがアーカイブとして持つ当時のアイテムに基づき男性の衣裳を制作。プラダやミュウミュウ、ティファニーも衣裳協力。
・ブルックスブラザーズでは衣裳提供した中から8スタイル&アイテムを「ギャツビー・エクスクルーシヴ」として、青山本店を含む全国6店舗限定で販売(6月23日まで)。
◆1920年代のアイテムには現代人を感動させる「不変のエレガンス」がある。自信に満ちた堂々とした振る舞いは立派な身なりから生まれる。そんな古典的な美学が新鮮。
◆スーパークールビズが提唱され、オンタイムの服装のカジュアル化が一線を越えて進行。この動きは一方でその対極にあるドレッシングアップ志向をファッション意識の高い人たちを中心に生み出していく・・・・カジュアル化も場合によっては美的緊張感のないものに映り、節度がオシャレの要素であることに気づく。
・メンズではダンディズム、ウィメンズではレディーライクがキーワードに。背後には、不変のエレガンスの要素となるオーソドックス、クラシックの美を尊重する大きな潮流がある。


(2)エイジング・ウェル/「8月の鯨」など

◆シニアを主役にする映画が増え、人気に。社会の関心を映し出している・・・・最近では「マリーゴールドホテルで会いましょう」、「人生の特等席」、「桃(タオ)さんのしあわせ」、「グラントリノ」など。また、1987年の秀作「8月の鯨」が今年になって全国の単館で上映。
・歳を取ることとどう向き合っていくか・・・・大きな関心事に。
◆東日本大震災をきっかけに足元での買い物機会が増える中、コンビニを利用する中高年が増えている。ネット通販を利用する中高年が増えており、ヤフーのネット通販売上高に占める50代以上の割合は20代を逆転。フィットネスクラブの会員数の半分強を50歳以上が占める。メガネのミキでは遠近両用レンズの販売額シェアが52%に。ユニチャームの大人用紙おむつの売上げが乳幼児用を初めて上回った・・・・中高年、シニアへ、消費の主役が移動しつつあることを示す動きが様々出てきている。
◆社会のあり方や消費を考える主役がシニアになる。引っ張るのがグレイング・パワー世代。既成の価値観を打破してきた世代だけに、先行する高齢者にはない生活観、消費観を持っており、ニューシニアと呼びたい。マーケティング視点からのポイント。
・感覚はエイジレス・・・・感度をモノの価値基準にした最初の世代。
・高くても質のいいモノを・・・・ひとり、夫婦ふたり。
・ご近所で、心地よく過ごせる店を。
・エネルギッシュであることがステイタス・・・・行動的生活の源泉。
・絆重視、特に親子の絆。
・それでも体力は衰える・・・・ソリューション策が商機になる。
◆シニアを基準に考えることが、これからの店作りや商業施設のあり方を考えるうえでの新しい常識になる。60歳を過ぎてなお店や商業施設とつき合う年数は長い・・・・60歳の平均余命=男22.7年、女28.12年。
◆ところで、シニアって何なの?


(3)美と感性の注目テーマ/ブラジル

◆政権交代、さらにはいわゆるアベノミクスの影響もあろう、マインドが「ポジティブ」へと急激に進展してきている。透明感、明るさ、活気、エネルギッシュが感性を刺激する要素となる。その時代の風とブラジルの持つ陽気さとの結びつき・・・・来年にはワールドカップサッカーが、さらにはリオデジャネイロ・オリンピックが開催される。
・しばらくブラジルが注目の国になる。
◆西武渋谷店が開店45周年を記念して、ブラジルをテーマにしたフェアを開催。「オーイ!ブラジル」(はじめまして、ブラジル)と題して、ブラジル発の紳士婦人ファッション衣料、下着、水着、バッグ・靴・アクセサリーなどの服飾雑貨、化粧品を全館で展開。
・顔となったブランドがカルロス・ファルチ(バッグ)。
◆2014年はブラジル発のファッションが鮮度を発信。それにリードされてスポーツ・テイストがファッションのトレンドになる。
・感覚的なテーマは「エンドレス・サマー」。


(4)フラット化とケミストリー/刺激創造のポイント

◆2期目に入ったオバマ大統領。その就任式は全米で数百万人が視聴。そこで話題を集めたのが、ヘアスタイルをボブカットに変えたミッシェル夫人の服装。アメリカ人デザイナーによる服を着ることでファッション業界に貢献。
・就任式晩餐会の正装用ドレス・・・・ジェイソン・ウー。靴はジミー・チュウ。
・宣誓式の服装(昼間)・・・・テイラードのコートとその下のドレスはトム・ブラウン。イヤリングはキャシー・ウォーターマン。午前中に履いた靴はJクルー。その後替えたブーツとカーディガンはリード・クラッコフ、ベルトがJクルー。
◆高い・安い、先進性・保守性、知性・通俗性・・・・時には相反する様々な要素を同列に並べ、自分の価値軸で取り出してミックスし、自分のスタイルにする・・・・『フラット化』(既成の価値観にとらわれず、同一の平面に置いてみること)が進歩的な生活者の消費観に。
・その消費観のリーダーがオバマ大統領のミッシェル夫人。服装からインテリアまで、気鋭のクリエイターのものからプレステージ性の高いもの、そしてマスブランドまで、垣根を越えてこなすセンスが新しい。
◆『フラット化』はこれからの刺激的な店作りのポイント。単一であることは退屈でつまらない。価格に凹凸がある、予想外のカテゴリーミックスがある・・・・『スクランブル』(引っかきまわす)のコンセプトが興奮を創造する。


(5)地場産・方言食

◆アッシュ・ペー・フランスによる、創造性を楽しませるザッカ店「ルームスショップ」が、「地場産」と名づけた、日本各地の職人による民藝品を集めるMDを展開。地域の産品を集めた店「のもの」(上野駅)が面白い。クラフトビール(地ビール)への関心の高まりとヤッホーブルーイングの人気。日本全国47都道府県の食をテーマに、各都道府県の美味しい食材を選んで作り、これを定食の形で提供する「d47 SHOKUDO」(ヒカリエ)の人気。
◆日本全国各地のモノと食を構成軸にする、日本郵便が手がける初めての商業施設「キッテ」。隈研吾氏の内装も話題。メジャーな全国区の店がほとんど見当たらず、マイナーな地方出身で構成。館内を巡ることで『旅』を楽しめる。
・モノ探し、方言食の探求を楽しめる新しいスポット。
◆これまでにも、日本の生活美を形にする雑貨店「クラスカ・ギャラリー&ショップ・ドー」、民藝の精神を汲む洗練された雑貨店「カタカナ」、日本各地から集めた、伝統に根ざしたグッズを集積する「ステテコドットコム」など、日本の美に焦点を当てる店が注目を集め、繁盛している。
・こけし人気もしかり。
◆地場、風土、地域、地方・・・・生活者はそういった言葉で表現されるモノ、コトにトキメキを覚える。大別して2つの切り口。
・民藝。その土地の素材を使い、地域の職人によって作られた「民衆の生活のための工藝品=民藝品」・・・・2000年代半ば頃からの動き。
・『方言食』・・・・駄菓子も含めて風土に密着した地場の食の探求。いわゆるスローフード(地域の食材を使った、その地域の伝承的食べ物や料理)の探求。
◆標準化・画一化された文明性を風土密着の文化性で補正したい・・・・注目しておきたい生活姿勢、消費姿勢。



2.よくできた定番が消費意欲を喚起

《不朽の名作に心を寄せる》
◆消費の基本姿勢を示すキーワードは引き続き「永続」。ここ数年の傾向であり、サスティナビリティ(持続性)が社会や生活のパスワードになっていることとも関係。「暮らしの中でずっと残っていくもの」が尊重され、タイムレススタイル、ロングライフデザイン、ラスティングデザインが消費を刺激するキーワードになる。
◆ファッションの分野では時流に左右されることのない「不朽の名作」と呼べるアイテムに心を寄せる動きの広がり・・・・時流を超えて永続しているスタイルは退屈なものではなく、大いに刺激的なもの。ファッションとしての新しさを追求するうえで必需のものに。

《「ザ=the」と呼べるモノを》
◆不朽の名作はよくできた定番でもある。生活者の関心は上質な定番へと向かう・・・・使いやすく、シンプルなデザイン、それでいて上質。世の中にありそうでないもの。表現を変えると、「ザ・ジーンズ」と言えばリーバイス501を指すように、「ザ」と呼べるモノに消費の価値を感じる。
・定番と呼ばれるモノの基準値を引き上げていくことを思いにする新ブランドが登場。トレンドセッターとして注目・・・・「THE」。グラス、漆器の椀、コースター、白のTシャツ、和洋中どんな料理にも合う皿、アルミの弁当箱を提案。丸の内の新商業施設「キッテ」に『定番のセレクトショップ』を開設。
◆食にも追求する最上の定番。平凡な食べ物や慣れ親しんだ食べ物に最上の味覚を追究する・・・・食探究の重要トレンド。パンケーキ、フレンチトースト、エッグベネディクト、オムレツ、さらにはポップコーンも。

《よくできた定番/PB、PLを考える視点》
◆アメリカの高級百貨店ニーマン・マーカスが開設した婦人服売場、「NM ラグジャリー・エッセンシャルズ(NM LUXURY ESSENTIALS)」。同名の新しいPBコレクションを展開するもの。「上質なワードローブ・ベーシックス」の提供に企画開発コンセプトがある。
・特色は高品質の素材とタイムレススタイルのアイテムとの結びつき。ソフトで超軽量、肌に心地よく、シワにならず、それでいて家で洗濯できる。
・エイジレス。上質を究めながら価格が手の届くところに設定されている。
◆世の中、ありそうでないのが「よくできた定番」。ありそうでないが、自店の顧客に提案することで、「こういうものが欲しかった」と共感の得られるもの・・・・PLやPBと取り組む基本的な意義。
◆消費に知性や教養を意識する動き。そういった消費を身につけることが、よりクラス感の高い生活者であることを自覚させる。



3.日用性を究めたモノが精神を高揚する

《「ふつう」が素晴らしい》
◆ロストジェネレーションのスローライフ志向と「ふだん」とていねいに向き合いたいという思いによる身の丈消費、等身大の生活への目覚めに始まって。そこからふだんの暮らしに密着したモノ、即ち、日用性を究めたモノに心を寄せる動きが広がってきている。
・デイリー、エブリデイはこれからも継続する消費テーマ。
◆日用性を究めたモノはほとんどがデザイナー不詳の、いわゆるアノニマス(anonymous)デザイン。平易な表現をすればごく「ふつう」のモノ。デザインが語り過ぎたり、突出したりすることなく、「ふつう」のモノは無口に暮らしの中に溶け込むことで心地よい・・・・「ふつう=オーディナリー」が生活美学として特別な意味を持ち始めている。
◆ごく「ふつう」のモノとは、毎日使うモノを絶え間なく進化させてきた営みの成果であり、形態の歴史を打ち壊そうなどという試みではない・・・・世界的に知られるプロダクトデザイナー、ジャスパー・モリソンの言葉。

《日用品にトキメク》
◆日用性を究めたモノは美しい。衣食住すべてのモノについて、日用品の姿、性格を持つモノにトキメク時代。所得の大小を問わず生活者の間に芽生えてきている消費観がそこにある。車を見てもプリウスや軽自動車のN-BOXがよく売れているように、日用品としての佇まいを持つものに心を寄せる・・・・消費者として、より知的で高等だという意識も作用。
◆改めて無印良品に注目。店名の由来であるノーブランド・グッズの背後にある、実質性を重んじる精神をしっかりと踏まえ、生活者の共感を集める商品を広げてきている。
・ふだんの食卓で毎日使える丈夫な食器類など。
◆ヒカリエ8階で開催された「47 GOOD DESIGN〜47都道府県のグッドデザイン賞」。過去にグッドデザイン賞(1957年に発足したいわゆるGマーク)を受賞したモノを47都道府県の地方別に並べてみようという試みによるもの。受賞したモノが特別なモノではなく、まぎれもなく日用品であることを知る。日用品を究めることがグッドデザインであることに気づきを与える展覧会。
・ディレクターは「d47ミュージアム」を運営し、ロングライフデザインを提唱してきているデザイナーのナガオカケンメイ氏。
◆ワークウエアやアウトドアウエアといった『用の衣料品』への注目。過酷な環境や過酷な労働に耐える機能と頑丈さを前提条件として持っている。ひたすら「用」を求めた、飾り気のないヘビーデューティーな感覚が美意識を刺激する時代。
・鉄道作業員、工場労働者、漁師や船員、木材伐採人、さらにはバイク・メッセンジャーなどにまでわたるワークウエアをはじめ、アウトドアウエア、ミリタリーウエア、スポーツウエアなど、本来はファッションとはまったく別のところで生み出された衣料が用を究めていることでファッションの価値を持つ。


4.少し高くてもいいモノを

《クラスアップ》
◆大きな流れで見ると、リーマン・ショックに端を発した消費観がフェイドアウトし、次なる消費観へと入れ替わり始めている時代。2014年にかけてそれは決定的なものになる。端的に言えば、安さを重視する消費観から質を重視する方向へ。安さに価値を求めていたときには気にならなかった質の悪さが気になる。安い買い物を重ねてきた体験が学習になって次へと進んでいく。
◆ファストフードなどの外食部門では依然、低価格を競う動きが続いているが、モノを見れば総じてクラスアップの傾向が出てきており、トレンドとして広がるものと考えられる。プライスグレードで見ると、中心がこれまでのバジェットゾーンからモデレートゾーンへ移行。クオリティやグッドテイストを踏まえたクラスアップが起きる。
◆平たく言えば、少し高くてもいいモノを。クラスアップ消費が特に日常生活に密着したところで起きる。ワンランク上のスタイリッシュ・エブリデイライフを。
・事例:スターバックス・・・・都市郊外にコーヒーが通常よりも2割程度高い店を出店、くつろげる店作りで足元に住むシニア層に訴求。
・事例:セブンプレミアム・・・・価格よりも美味しさを優先した惣菜やビール、ワインの企画。価格価値以前に質の面での価値を意識。
・事例:「ケイト・スペードサタデー」・・・・ケイト・スペードの生活美を軸にするライフスタイルブランド。まさにクラッシーな日常生活。有力デザイナーブランドとしてはこなれた価格。
◆背後にはニューシニアの消費観も・・・・いいものを少量。「スモール・バット・ラグジャリー」をよしとする。生活がスケールダウンするぶん、質は上げたい。

《アフォーダブルラグジャリー》
◆消費マインドがポジティブになることで、リーマン・ショック以降、凍結状態にあった富裕層の買い物が活発になり、それが先導役になってラグジャリー消費が目を覚ましつつある。
◆ラグジャリー消費といっても際限のないものではなく、わきまえた、控えめなラグジャリー消費。そこで対象になるのが、手の届く範囲のラグジャリー、即ち、アフォーダブルラグジャリー。
・そのことをよく示しているのがフォルクスワーゲン、フィアット、ベンツやアウディの小型車といった輸入小型外車の売れ行きが好調であること。
◆背後には、暮らしの中でずっと残っていく、永続性のあるモノを尊重する動きも。素材のよさ、作りのよさに目を向ける。それに応えるモノ作りが期待される。



5.ザッカ重視の店作り

《ザッカを展開する店が繁盛し、ザッカ業態の開発が活発化》
◆ファッション専門店にとって、服は売上げの主役ではあるが、来店を促す主役はザッカ。背後にはファッション衣料への関心や興味が薄れてきており、それ以上にザッカに対する興味が高いという認識がある。
・ザッカMDを強化することで入店率を高め、来店頻度を向上させることができる。購買単価は下がるが、入店客数が増えることでの波及効果を期待できる。ザッカの範囲は服飾雑貨にとどまらず生活雑貨にも及んでいる。
◆ザッカ専門業態の開発が活発化。アッシュ・ペー(HP)フランスの「トーキョー10月 HPフランス」(東京ソラマチ)や「ラブレター HPフランス」(ルミネ北千住)、アーバンリサーチの「メイクストア」。ファッション小売業によるザッカ専門業態は感度の高い品揃えもあって、ギフトザッカ業態という新たな可能性も持っている。
・伊勢丹が新たに東名高速の海老名SA上り線にテミヤゲ&ギフトをテーマにしたザッカ業態を出店。5月29日から9月11日までの期間限定。27u。父の日、夏休みなど折々を踏まえた展開を行う・・・・「ハネダストア」も一種のザッカ業態。
◆好調を持続しているシンクス・・・・『アーバン・ザッカ・マーケット』の性格。
◆阪急うめだ店の「うめだスーク」(10階)が面白い・・・・趣味雑貨、手芸雑貨といった、百貨店では縮小傾向にある売場が集客のうえで重要な役割を持っている。

《婦人服飾雑貨に強みを求める百貨店》
◆婦人服展開スペースを減らして婦人服飾雑貨のスペースを拡大・・・・ニューヨークの百貨店のリニューアル、阪急うめだ店や伊勢丹新宿店のリニューアルにも見られる傾向。感度の高いオシャレのしどころは服飾雑貨にあるという認識に応える。
・婦人服飾雑貨拡充の背後にある消費観とは。
◆婦人服飾雑貨のなかでも特に婦人靴に着目。婦人靴のデスティネーションストアを目指す動きが出てくる。リニューアルで誕生した伊勢丹新宿店の婦人靴売場はその事例のひとつ。ニューヨークでは婦人靴で一番を目指す動きが活発化・・・・発端になったのがサックス・フィフス・アベニュー。メーシー本店は世界最大規模、総面積5,800uの婦人靴売場をオープン。
◆百貨店において婦人服飾雑貨の拡充は簡単ではない。従来のように1階にこだわっていられない。服飾雑貨を形成する各カテゴリーやアイテム、さらには化粧品の買い物上の性格を再度吟味しながら、展開フロアを1階以外へと広げる動きが活発になり、百貨店の店作りの新しいトレンドになる。
・カテゴリーバランスやフロア構成における新たな指針と尺度が必要。



以上



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