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2014年6月13日開催

1.注目事象から

(1)アスレティック・ルック


《高揚感とスポーツのエッセンスと》
◆ニューヨーク・東京ともに2014年春のホットカラーは男女共通して真っ白。真っ白であることが新しさの興奮につながるポイントに。特に目につくアイテムが真っ白のシャツ、真っ白のパンツ。白にもいろいろな白があるが、その成分要素になっているのが強さで、強烈なストレートパンチの印象を与えるストロングな白。
◆真っ白の衣料アイテムを見ていてイメージするのが、体操競技のユニフォーム、テニスのウインブルドンで選手が着用するウエア、そしてオリンピックの開会式に登場する選手団のユニフォーム。つまり、強さを感じさせる要素になっているのが「アスリートの白」。
・街頭の着こなしでも、ネイビーのブレザー(ないしはそれをイメージさせるジャケット)に白パンツという、まさにスポーツのスピリットを感じさせる姿が印象的。
◆強さを成分要素にする白がホットになっている背後にある大きな要因・・・・ポジティブから楽観主義へと進んでいく時代にあって、マインドのキーワードが引き続き「エンハンスメント(Enhancement)=高揚」であること。その高揚感につながる重要なインスピレーション源がスポーツ。
・「エンハンスメント」と重ね合わせて、感性を刺激する要素として、強さ、明快さ、快活さ、陽気さに注目。

《「街」と「競技場」の融合》
◆トラックスーツ、フーディーズ、バスケットボールと結びつくマッスル・ティーをはじめとするアスレティックなアイテムを取り入れる動きが活発になり、ハイカットスタイルからスリップオンタイプのものまで、スニーカーが着こなしに新しさを表現するポイントになる。その姿は「アスレティック・ルック」と呼びたいもの。
◆タウンの着こなしにパフォーマンスの要素を持つアイテムを取り入れる。昨年あたりから頭をもたげてきたトレンドがさらに広がる。パフォーマンスのステージになる競技場とファッションのステージになる街の融合に新しさの興奮がある・・・・アスレティック・ルック。新しいミックス感覚が先端を行く着こなしのポイントに。
・オンの着こなしにスニーカーを提案・・・・西武池袋店が提案する「スポーティー・オフィス・スタイル」。
◆アスレティック・ルックに応える注目店、「オニツカタイガー」。もともと60年代のレトロな感覚がファッションとして評価されてきたブランド。ここに来て、競技場と街の融合というトレンドを得て関心を集め、ファンを増やしている。


(2)男よ、フラワーギフトを/バレンタイン商戦が広がる兆し

◆今年のバレンタインデイで注目されたこと・・・・生花店が打ち出した「フラワーバレンタイン」。バレンタインデイに男性から女性に花を贈る慣習を創ることを狙いに。バレンタイン当日の夕方以降の時間帯の生花店には通常よりもはるかに多くの男性客を見かけた。
・伊勢丹メンズ館では男性客2,700人にチューリップ一輪を配るイベントを実施(バレンタインの前の週末)。
・生花店のなかには「いい夫婦の日」に男性に花を贈ろうといった呼びかけをする取り組みも・・・・そのための知恵と工夫。
◆花を贈ることが言わば入門編になって、バレンタインデイに男性から女性へギフトを贈ることが新たな常識になっていく。欧米のように男女双方向になれば、バレンタイン商戦の中身もかなり違ったものになる。特に注目は、男性から女性へのギフトが金額のうえでも主役になること。
      ・欧米に見るバレンタインギフト好適品とは。
◆欧米のバレンタイン商戦>日本のバレンタイン商戦+ホワイトデイ商戦。


(3)写真関連消費に注目

◆ミラーレス一眼の普及が伝統的な趣味のひとつである写真の裾野を広げつつある。梅佳代(人物写真家)などにも刺激されて、何気ない日常を写真で切り取ることを趣味にする人は多い。特に「カメラ女子」と呼ばれるように、シニア層も含んで女性たちが高級カメラ市場で見逃せない存在になっている。
◆高級カメラの頂点と言えるのがライカ。百貨店にオーディオのボーズのショップがあるように、カメラでライカショップがあっていい・・・・趣味雑貨であると同時に高級腕時計とも感覚的つながりがある。西武池袋本店が新たに「ライカ&カメラスタイルショップ」を開設(66u)。高級デジタルカメラやビンテージカメラを常時20種類揃える。
      ・女性の顧客も多い。
◆「カメラ女子」の増加と共に人気繁盛店になってきているのが「ポパイカメラ」(本店が自由が丘)・・・・長い歴史を持つ老舗写真専門店。写真を楽しむことを提案し続けてきており、トイカメラ、ロモグラフィー、アルバムに加えてカメラストラップ、カメラバッグなど写真に関連する様々なアイテムを集積。
・特に「カメラ女子」にとってのオシャレのしどころとなるカメラストラップ、カメラバッグについて、女性の感性を刺激するセレクションが魅力的。
◆写真関連雑貨には服飾雑貨としての広がりが出てきていることを読み取れる。


(4)ビーン・トゥ・バー

◆ショコラティエ自らがカカオ豆を自家焙煎して工房で作るチョコレート、「ビーン・トゥ・バー(Bean to Bar)」がホットに。意味するところは「カカオ豆から板チョコへ」・・・・チョコレートは通常、クーベルチュールと呼ばれるチョコレートを原料にして作られる。
◆ビーン・トゥ・バーは日本ではコロンビア産カカオにこだわる「バニラビーンズみなとみらい本店」が代表的。他にも自家製を売り物にする小規模なチョコレート工房がいくつか出てきている。
・乳化剤を使わず、チョコレートの原点的な味わいを求めてカカオと砂糖だけで作る。カカオ含有量が70%。濃厚な味わいが特徴。
・プラザではバレンタイン時期に輸入物のビーン・トゥ・バーを集めるコーナーを開設・・・・チョコレート慣れした女性たちに新たな発見を楽しませる。
・タブレットショコラがこだわりのチョコのシンボルに。
◆ビーン・トゥ・バーに感じるのは、馴染みの食べ物を作品として追求し、愉しむ姿勢。マス化し、標準化したものがあふれる中で出てくる注目すべき動き。


(5)持続する社会の具現化と健康管理と

◆ニューヨークで爆発的な広がりを見せている新・健康法、ジュース・クレンズ(Juice Cleanse)。コールドプレス・ジューサーと呼ばれる圧搾機で搾ったジュースを数日間食事代わりに飲み続け、体内を浄化する健康法。断食に近い効果があるとされる。
・ネットが中心で、1日にジュース6本を飲む3日間のプログラムで200ドル。
・材料は果物、野菜、ナッツ、ハーブなど(ジュース1本当たり1〜2.5kgの果物、野菜使う)。日本でもジュース・クレンズ専門店が登場。「サンシャインジュース」(恵比寿)。
◆インナービューティーへの関心の高まり・・・・身体および心の健康を基本とし、そこから溢れ出る美しさ。エイジングを意識する生活者が共感。食べる、眠るといった日々繰り返す行為を見つめ直す動きも。
◆加えて「健康寿命」への関心の高まり・・・・「健康管理に努め、医療費を抑制する」ことは生活者に求められた、「持続する社会の具現化」という社会的要請に応えること。栄養学の視点で日々の食を見直す動きはこれまでにも増して重要な生活テーマになり、これに加えて「健康経営」(従業員の健康管理を経営課題としてとらえ、その実践を図ることで生産性の向上を目指す経営手法)が企業にとっての課題として浮上してくる。
・栄養学の知見が生活者の食生活を指南する時代に・・・・タニタ食堂からの流れ。シェフから栄養士へと食のトレンドセッターが替わる。


2.マテリアル世代、そしてニューマテリアル世代

◆「豊満な消費の時代」であり、高揚感に満ちた時代である、80年代に共通する時代感覚。さらには50年代とも時代感覚が共通・・・・大恐慌から第二次世界大戦へと続いてきた不安と不透明の時代から、文明の進歩による豊かさに限りない未来を描いた時代。
・80年代風俗、50年代風俗がインスピレーション源に。

《マテリアル世代/改めて消費の主役として注目》
◆豊満な消費を謳歌した80年代に自我を確立したのが、現在40歳前後から50代初めにかけてのマテリアル世代。物欲旺盛でスノビッシュな生活感覚、物質的豊かさを価値として意識。プレミアム消費を強く志向し、より感度の高いモノ、より質の高いモノに金を惜しまないところに消費上の特質がある。
◆子育てが終わるライフステージに入ってきたこと、クラスアップ志向が時代の風になる中で消費の主役として注目の存在になる。
・40代を読者対象にする女性ファッション誌の創刊。「オトナミューズ」と「大人のおしゃれ手帖」。不動産や高額商品の広告も期待でき、雑誌としての成立性は高い。
・男性については既に40代を意識したメンズファッション誌が好調。「オーシャンズ」「ウオモ(UOMO)」「レオン」・・・・代表的3誌。
◆女性も男性も熟年になったマテリアル世代に改めて注目し、彼らの購買を刺激するモノ、コトの提案に可能性がある。特に百貨店にとっては顧客創造の視点になる。
・「夫婦2人」でエンジョイを意識する生活への働きかけ・・・・上のミージェネレーション(Me Generation)にも共通していること。

《『ニューマテリアル世代』の登場》
◆安倍政権誕生以来のポジティブな時代性、さらにはそれが進んでの楽観主義の時代性が、若者のなかに新たな世代の先頭を生み出しつつある。悲観主義の時代性のもとで自我を確立してきたロストジェネレーションとは異なる性質を持つ世代が台頭。
      ・新卒の採用状況が好転していることも要因のひとつ。
◆新世代の特徴は体制的であること。例えば、ロストジェネレーションから生まれてきた「ピースフル・スローライフ」ではなく、よりサクセスフルな生活を志向していく。新世代は既成概念を打ち破って独自の世代文化を育んできたミージェネレーションやロストジェネレーションとは根本的に異なり、体制的という点でマテリアル世代と共通する・・・・「マテリアル世代ジュニア」と呼ぶにふさわしい。
      ・誕生してくる新世代は、たいていの場合、先行世代を反面教師にする。
◆まだ経済力に恵まれているわけではないので、消費をリードする存在にはなり得ないが、若者の消費の風景を新しくしていく。


3.スタンダードアイテムを/価値創造の視点

《『ふつう』をデザインする/永続するモノを創造する作法》
◆今、高い美意識を持つ人々の間で注目されているファッションブランド、「ヤエカ」。シンプルで長く飽きずに着られる日常着をコンセプトに、2002年にデザイナーの服部哲弘と井出恭子が設立。「暮らしの中でずっと残っていくモノを」という消費観の高まりとも連動、じわじわと注目度が高まってきている。
・作っているのは、シャツ、スウェットシャツ、ジーンズ、綿パン、ジャケット、ステンカラーコートなど(メンズラインとレディスラインがある)。綿パンは股上が深くゆったりしており、どのアイテムも着て心地よいことを大切に設計されており、着るほどに体になじんでいくことを実感し、愛着が湧いてくる。
◆「ヤエカ」の創造への姿勢に触れて頭に浮かぶのが「アノニマスデザイン」(無名性のプロダクトデザインによるモノ)・・・・たいていが実用に根ざし、使い勝手を究めており、だからこそ永続する。美的な付加価値だけがデザインの役割ではなく、サスティナビリティが社会的課題になる時代にあって、暮らしの中で生命を維持できる不変性もデザインの果たすべき重要な役割であることに生活者は共感を覚える。
・デザイナーが存在しながらデザイナー個人の創造性の存在を感じさせない。「ヤエカ」はその点でまさにアノニマスデザイン。

《成熟した消費観に働きかける》
◆このところ、ファッションの分野では「ベーシック」がトレンドワードになってきている。例えば、基本中の基本である白のシャツが美意識の高い生活者の間でホットアイテムになり、「ワールド・ベーシックス」のように、永続するスタイルによる素材、縫製技術にこだわった質の高い服と取り組む動きも・・・・ベーシックが最強のトレンドになっている時代。
◆『ふつう』をデザインすることで永続するモノが生まれる・・・・そういったモノは「スタンダードアイテム」、即ち流行を超えて存続する商品である「定番商品」と呼ぶのが適切。消費体験を重ねて行き着く洗練の境地において欲しくなるモノとはスタンダードアイテム。たいていが無口で飾り気がなく、色柄・素材・デザイン、どの点から見ても変わりようがないことを実感させるモノ。
・「ロンジビティ(長命・長寿)」がいいモノの持つべき基本的な性質になり、それと歩調を合わせて、消費観が質を重視する方向へと急激に転換しつつあることも。成熟した消費観とは、変わらないものを見抜く審美眼を持つこと・・・・「教養ある消費」。
・モノの寿命には2つの側面がある・・・・感覚的寿命と物性的寿命。
◆ファッションではなくスタンダードアイテムであること・・・・ファッション性を否定することが逆にファッションのトキメキになる。そこに着目することが新たな需要開発、あるいは価値創造につながる時代。


4.ふだんとていねいに向き合う/生活のクオリティを意識

《コーヒーを作品として愉しむ》
◆コーヒーを手作業の趣味として楽しむ動きが徐々に広がってきている。そのことを示すのが、ミルへの関心。実際、業務用ミルの名機と言われるフジローヤル製「みるっこ」の家庭版が人気商品に。業務用と変わらぬ性能で40,800円。
◆日常的存在であるコーヒーが探究の対象になっている。手作業でコーヒーを淹れる専門店、自家焙煎の豆を扱う店、スペシャルティコーヒー豆を扱う専門店なども増えており、コーヒーを取り巻く市場が注目を集めている。アメリカでは情熱を持ってコーヒーを究めた人物が自宅のガレージで始めたコーヒーバー「ブルーボトル・コーヒー」が、サンフランシスコで行列のできる人気店になっている。
      ・スペシャルティコーヒー豆によるコーヒー「サードウェイブコーヒー」に注目。

《「朝食」はよくできた「ふだん」のシンボル》
◆パンケーキ、フレンチトースト、エッグベネディクト・・・・「朝食」が味覚探究のテーマになり、これをメニューの特色にする飲食店が例外なく繁盛。背後にある、よくできた「ふだん」を追い求める生活観。「朝食」は「ふだん」の代表。
◆これに関連して関心が高まっているのがグラノーラ・・・・オーツ麦、ライ麦、玄米、とうもろこしなどの穀物にハチミツや黒砂糖などを混ぜて焼き上げたシリアルの一種で、朝食としてドライフルーツやナッツを加えて、牛乳をかけて食べるのが一般的。「ガノリ(GANORI)」というグラノーラ専門店も登場。
・グラノーラは植物繊維、ビタミン、ミネラルを豊富に含み、栄養価が高い・・・・このところの「栄養学的に正しい食事」を志向する動きとつながる。
◆食パン専門店の登場・・・・「セントル ザ・ベーカリー」(銀座)。フランス伝統のバケットで有名なベーカリー&レストランを展開する「ヴィロン(VIRON)」による新業態。一般的な食パンの価格からするとやや高いのだが、焼き上がりを待つ人の列が外までできる人気ぶり。併設するレストランでは「食パンの食べ比べができるメニュー」を提供。

《質の高い手入れへの関心の高まり》
◆ニューヨーク発の衣料用洗剤の「ザ・ランドレス」が人気商品に。特色は生地ごとに成分の違う洗剤を揃えていること・・・・白い衣類、濃い色の衣類、デニム用、カシミアなどのデリケートな素材に特化したものなど。成分に石油系原料を使用せず、植物性原料を使用、洗った後の排水は自然分解され、すべて自然に還る。基本的な洗剤が1本(1?)3,675円。高感度ファッション店がこぞって扱う。
      ・ギフト好適品になっている・・・・「ふだん」を大切にしている生活感覚を贈る。
◆いいモノと長いつき合いをする消費姿勢が広がるなか、質の高い手入れに対する関心が高まっている。モノと同時に手入れ法を教え、手入れ用品を売ることに目を向けたい。


5.生活系ザッカを主語にする業態ブーム

《チープシック・ザッカ業態=都市の中の新しい遊び場》
◆デンマーク発の「タイガー・コペンハーゲン」と「ソストレーネ・グレーネ」、スウェーデン発の「ラガハウス」が日本に進出。さらに同様の性格を持つものに「アソコ」「レインボースペクトラム」「オーサムストアー」も。チープシックを魅力にする生活系ザッカ店の開発がブームの状況にある。
      ・原宿がその言わばデスティネーションタウンに。
◆これらの生活系ザッカ業態に共通していること・・・・短サイクルで商品を投入していくビジネスモデルを確立。その点で『ファストザッカ』と呼べる。それによって、いつ来店しても新しい発見がある、買いたくなるモノがある店頭状況を創造。それを購買へと発展させる力になっているのが数百円で買える絶対的安さ。楽しめて、発見があって、テミヤゲ等プチギフトを調達でき、都市の中の新しい『遊び場』としての存在価値がある。
      ・ザッカ第1時代をリードした1970年代のソニープラザを想起する。
◆現代生活者の消費観からすると生活系ザッカには3つの価値要素がある・・・・「実」(実用としての価値)、「美」(デザイン性の高さを中心にする美的な価値)、「遊」(遊び心に語りかける楽しさ、面白さの価値)。この中で「美」「遊」の価値要素を持つザッカは気持ちを高揚させる力を持ち、店を『遊び場』にする。
・ザッカの存在がその店への興味と関心を高め、入店率を高め、来店頻度を上げ、購買頻度を上げることに貢献すると認識されている時代。

《サバーバンライフストアが業態開発ブームに》
◆センスのいい家庭生活は自己実現である。ファッションとは衣服にとどまるものではなく、生活のあらゆる場面を束ねる生活思想そのもの・・・・そう感じることから。ファッションアイテム以上に生活系ザッカに心トキメク時代。
・ファッション業態の中でもアパレルと服飾系ザッカだけを売っているところは、優れたセレクトで興奮を与えない限り退屈感を感じさせる。
◆「シック・サバーバンライフ」をテーマに、ほどほどの感度、ほどほどの価格のファッション衣料(メンズ・レディス、時にキッズも)と生活系ザッカの複合型MDを特徴にする新しいサバーバンライフストアの開発が活発に。特に都市郊外のRSCに向けて。背後には様々な要因がある。業界ではこれをライフスタイルストアと呼んでいるが・・・・。
・これらのほとんどは複合型ファッション業態。その店なりの生活美学を軸に、異なるいくつもの商品カテゴリーを横断する形で貫く、クロスMDを特色にするライフスタイルストアとは別物。



以上



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