ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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1.6.2006
スープの日常食化とそこからの「欲求連鎖」

ウエスタン感覚のものも含めてロングブーツがトレンディアイテムになると、そのオシャレを楽しむためにスカートが欲しくなる。この冬、街頭の女性たちの着こなしを観察していて痛感することである。あるアイテムをものにするために、それとのつながりで別のアイテムへの欲求が出てくる。よくある話であるが、特に新しい人気商品や動きが出てきた場合には、こうした言わば「欲求連鎖」を念頭に置いて思考しなければならない。そして今、そういった意味での興味深い事例がスープである。

このところ、野菜などの大きな具がゴロゴロと入った具だくさんスープが人気になってきている。こうしたスープは今や商業施設に必需の構成要素になっているスープ専門店で楽しめると同時に、家庭料理としても人気のメニューになってきている。背後には結構奥深い複数の要因があるのだが、それはさておき、これまではどこか脇役的な存在であったスープが、家庭での食事であれ外食であれ、メインディッシュとして意識される時代が到来している。

スープが日常食化し、その位置づけが高まると、ここにひとつ「欲求連鎖」が出てくる。つまり、家庭でスープを楽しむための器が欲しくなる。勿論、ごく一般的な平たいスープ皿やシチュー皿でも悪くはないし、朝食であれば手持ちのコーヒーマグでも十分に役割は果たしてくれる。しかし、スープに対する新しい感じ方からすると、それらの器ではしっくりこない。例えばカフェのランチで出されるような、あるいはスープやシチューのテレビCMに出てくるような、実用的で、それでいて軽妙なオシャレを感じさせるものが欲しくなる。


そんなわけで今、女性に人気の生活雑貨店を中心にホットアイテムになっているのがスープ用のマグである。ぽってりとした丸い形状は汁椀やカフェオレボウルに似ているが、それらよりも二回りほどサイズの大きな、把手がひとつ付いた器である。見た目よりも容量が大きいうえに口が広く、片手で楽に持つこともできるため、具だくさんのスープでも汁気の多いスープでも、スープ系の料理を食べる器としては万能の使いやすさを持つ。しかもひとつ千円〜2千円程度と価格が手頃なこともあって、新たな食卓の必需品として女性たちの所有欲を誘っている。

いや、もうひとつお忘れなく。スープ用のスプーンである。深さのあるスープマグから大きな具も含めて中身をすくいやすいことが条件になり、そこで例えば中華料理のレンゲの柄(持ち手部分)を長くしたような印象のものなどが打ち出されている。「欲求連鎖」はここまで及ぶのである。





 

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