ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
1.23.2006
ブライダルレジストリー促進を意図したMDゾーンの構築

ケイト・スペードと言えば海賊版が出るほどの人気のハンドバッグで有名なNYデザイナーである。魅惑的な色使いによるナイロンのトートバッグで世に出て以来、十数年、アメリカの高級百貨店のハンドバッグ訴求においては不可欠のブランドになると同時に、サングラスやステーショナリーなど、デザイナーとして手がける商品分野を拡大してきている。そのケイト・スペードが新たに取り組んでいるのがホームコレクションである。

ケイト・スペードのデザイン上の特性は「捻りのきいたトラディショナル感覚」にある。ポイントは素材の持つ表情と色との結びつきにウィットがあること。それによってアメリカ東海岸の端正なトラディショナルの美を基本にしながら、新しさの刺激が感じられるものになる。それは実は彼女自身の軽妙洒脱な個人的生活スタイルに根ざしたもので、それゆえにケイト・スペードは着こなしにおけるファッションセンスやリビングスタイルなどの面で、東海岸の富裕な生活感を映し出すシンボル的人物としても注目されるのである。そして、ホームコレクションはまさに彼女のリビングスタイルを反映したに違いないと想像させるものになっている。

ケイト・スペードのホームコレクションをショップに近い形態で取り上げているのがNYのブルーミングデール本店である。チャイナウエア、グラスウエアなどのテーブルウエアを中心に、フォトフレーム、花瓶、キャンドルホルダーといったホームアクセサリーで構成するもので、いずれにも彼女のデザイン特性が明快に感じられる。価格も例えばディナープレートが25ドルといったように、十分に手の届くものになっている。

ブルーミングデールではこのショップを6階のギフトウエアを集積するエリアの入り口にあたるところに設けているのだが、興味深いのは、これに隣接して、やはりテーブルウエアとホームアクセサリー・アイテムの構成によるラルフ・ローレン、カルバン・クラインのホームコレクションの売場を展開していること。これまでの実績が示しているように、ラルフ・ローレンもカルバン・クラインも個人的生活スタイルを語るデザイナーであり、そういったことからケイト・スペードと共通点を持つ。つまり、ここには3ブランドで三様の洗練された家庭生活の一端を語るゾーンが創出されているのである。

アメリカの百貨店における家庭用品、なかでもギフトウエアの基礎票となる顧客は結婚を控えたカップルであり、具体的なニーズとなるのがブライダルレジストリーである。ブライダルレジストリーとは、かいつまんで説明すると、結婚するカップルがブライダルギフトとして貰いたいモノを店が展開する商品から選んでリスト化し、ギフトする方はリストアップされたなかで自分が考えている予算に合うモノを選ぶという、双方にとってありがたい仕組みである。勿論、貰いたいモノの大半は新生活に必要なモノであり、そのこととデザイナーによるホームコレクション・ゾーンとを重ね合わせてみると、その意図するところがはっきりと見えてくる。

ブライダルレジストリー。既に日本でも馴染む仕組みであると思うのだが、百貨店がこれと積極的に取り組み、提案することの効果は大きい。それによって少なくともホームのフロアは今とは比較にならないほど存在感を増すものになるはずである。





 

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