ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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5.8.2006
テイスティングサイズと美的様相の結びつき〜今、日本酒が刺激的

焼酎とは対照的に低落傾向にある日本酒であるが、これがこのところ若い女性をはじめ、若者を刺激するものになってきている。刺激剤のひとつになっているのが新しいカップ酒の企画で、地方の蔵元もこれと積極的に取り組むようになってきている。カップ酒のポイントは1合(180ml)入りであることから、価格の面でも量の面でも、日本酒未体験者の多い若者層に気軽なつき合いを促進する力を持つ点にある。加えて新しい企画では、凝ったデザインのラベルを貼ったものや、かわいらしいイラストをガラス容器にプリントしたものなど、美的価値に配慮したものが多く、これが特に女性に訴求力を発揮している。

東京でカップ酒人気の火付け役を果たしたのは、渋谷・神泉町の「立喰酒場 buchi」、恵比寿の「立喰酒場 buri」である。いずれも「さかな竹若」等を展開する株式会社竹若によるもので、特にカップ酒が40種類と充実する恵比寿の「buri」をのぞいて見ると、店内の壁にずらりと並ぶカップ酒のディスプレイが目に飛び込んでくる。ラベルのデザインにアーティスティックな感覚のラベルデザインのものが多いこともあって、まるでポストカードかCDジャケットを眺めるような印象を抱く。また、女性客が驚くほど多く、そのなかには携帯電話のカメラで気に入ったデザインのカップ酒を撮ったり、飲んだ後に絵柄がかわいいとカップを持ち帰ったりする人も少なくない。

壁一面にカップ酒が並ぶ「立喰酒場 buri」。 様相がチャーミングなカップ酒。

気軽につき合える1合の量と容器の美的魅力ということでは、表参道ヒルズに登場した日本酒ブティック&バー、「はせがわ酒店」の試みも注目される。この店の看板商品となっているのが同店限定の「180mlレトロラベル」。これは今はもう使われなくなった昭和初期のラベルを復刻し、1合ビンに詰めたもので、全国の蔵元で少量醸造される本格的な純米酒や吟醸酒について29種類揃えている。ちなみに、この店には5〜6名が利用できるスタンディングバーもあり、濁り酒をはじめとする人気銘柄をワンショット300円〜400円で楽しむことができる。このように、品揃え、店作りの両面について、日本酒との気軽なつき合いを促進するうえでの戦略的意図をうかがえる。

カップ酒や180mlレトロラベルは一種の「テイスティングサイズ」と受け止めることもできるのだが、そのことと美的様相が結びつき、若い女性を中心に日本酒の未体験者を開拓する力になっているのは興味深いことである。





 

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