ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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7.17.2008
注目の映画発MD〜「セックス・アンド・ザ・シティ」コレクション

最もニューヨーク的なテレビドラマであると言われる「セックス・アンド・ザ・シティ」(1998年から2004年にかけてHBOで放映)は、時代感覚を反映し、風俗や消費に大きな影響を与えたことでも記憶に残る。ドラマはニューヨークを舞台に、上昇志向を究め、自分のブランドを確立した4人の30代後半の女性たちを主役に、彼女たちのラブ&セックスを絡めた生き方を軽妙にコミカルなタッチで描く。振り返ってみると、主役のサラ・ジェシカ・パーカーはドラマの中での着こなしで、アメリカ・ファッション評議会によるファッション・アイコン賞を受賞し、彼女の好きなマロノ・ブラニクの靴は女性たちの注目するブランドになり、高級ベビーカーのブガブー・フロッグはこのドラマに登場することで大ヒット商品になり、今日に続く高級ベビーカー志向の緒を作った。さらに、グリニッチビレッジに古くからあるマグノリア・ベーカリーのカップケーキはドラマに登場することでヒットし、以来、カップケーキ自体がホットなスウィーツとして関心を集め続けている。

この「セックス・アンド・ザ・シティ」が今年5月、アメリカで映画になって封切りになり、再び話題になっている。物語の舞台がニューヨークであるだけに、DVDやCDも扱う大型書店では過去の6シリーズのテレビドラマのDVDがクローズアップされるなど、映画公開のタイミングでのニューヨークでの盛り上がりには凄まじいものがある。ちなみに、映画の配役も出演者もテレビと同じだが、テレビの最終話から4年後という設定で構成され、従って全員が40代になっている。そのこともあって、マーケッターとしてこの映画で注目しておきたいのが、40代女性が表現するグラマラスな(魅惑的な)エイジレス女性の美と、その影響力である。

テレビドラマでの消費への影響力に着目してのことであろうが、映画についても興味深い商品企画が見られる。イタリアのランジェリー・ブランド、「コサベラ(Cosabella)」と映画とのコラボレーションによるランジェリーのコレクションである。主役となる4人の女性をテーマに、それぞれのエピソードとキャラクターを踏まえつつ、4様の異なるコレクションで構成するものになっている。なお、「コサベラ」の特色は独創的なカラーとプリントにあり、そのことは今回のコラボ企画においても共通する魅力になっている。

ブルーミングデールでの「セックス・アンド・ザ・シティ」コレクションを訴求するヴィジュアル・プレゼンテーション。

5月下旬、映画の封切りにタイミングを合わせつつ、この「コサベラ」の「セックス・アンド・ザ・シティ」コレクションを他に先駆けて打ち出したのがニューヨークの百貨店、ブルーミングデール本店である。場所は4階にある「インティマシーズ」と名付けたインティメイトアパレルのゾーンで、そのエントランスにあたる床に「SEX AND THE CITY」のロゴをあしらうと同時に、トップスペースでこのコレクションを着たマネキンを配してヴィジュアル・ポイントを創り出している。これは話題の映画と連携したMDをどこよりも早く打ち出すことを伝統的に得意技にしてきているブルーミングデールならではの企画と言えるだろう。

テレビドラマの「セックス・アンド・ザ・シティ」は日本では2000年から2004年にかけてWOWOWで放映され、特にその風俗やファッションがホットな話題になったことは記憶に新しい。日本で映画が公開されるのは8月23日と聞く。東京をはじめとする首都圏では、上昇志向する生き方のキャリアウーマンが消費におけるリーダーとして重視されるべき存在になってきているが、この映画がニューヨークのように女性たちを惹きつけ、何らかの刺激を与えることになるのかどうか、注目である。





 

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