ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
1.8.2010
「時流を超えた定番」がファッションの先端を行く時代

ニューヨークのバーニーズが婦人服フロアのエスカレーターを上ってきたところのトップスペースで「モンクレール(Moncler)」をクローズアップ訴求している。これは創業以来50年を超える、世界中の登山家たちにも愛用されているフランスのダウンウエアのブランドで、シャイニーナイロンによる光沢感と豊富できれいなカラーの結びつきに魅力がある。バーニーズは先端を行く新しさに焦点を当て続けることで特性を発揮している大型ファッション店である。その審美眼、あるいはMD基準と言ってもいいものに、基本的に昔から変わることのないモンクレールが適っているというのは実に興味深いことである。
ニューヨークのバーニーズでのモンクレールの訴求。

モンクレールは数年前からファッション通の間で注目され始めたのであるが、この冬、一気にファッションの表舞台の主役アイテムに昇りつめた印象がある。ニューヨークではバーニーズだけでなく、ブルーミングデールもまたこれをコート&ブルゾン売場のトップブランドとして位置づけ、やはりトップスペースでクローズアップ訴求している。また、日本でもファッションの先端を行くことを自認する店で同様の動きが見られる。ちなみに、モンクレールはブルゾンタイプ、コートタイプ、ファー襟付きと、いろいろなスタイルがあり、価格は安いもので7万円台から、多くが10万円をはるかに超え、今日の価格感覚からすると高額商品ということになろう。

ニューヨークではモンクレール同様に「永遠の定番」と呼びたい衣料ブランドが関心を集めている。フィッシングをはじめアウトドアライフを楽しむ人々の間で絶対的な支持を得てきている、1920年代以来の定番と言える「ペンドルトン(Pendleton)」の高品質のウールシャツ。1894年にスコットランドで、悪天候の下で働く水夫や漁師のための防水衣料として生まれたブランド「バーブァー(Barbour)」。百年を超える歴史のシアトル発のアウトドアブランド「フィルソン(Filson)」。防寒性に優れ、アメリカの南極観測隊も着用した実績のある、ウール素材の時流を超越した定番「ウールリッチ(Woolrich)。

長年にわたってウエアとして一定の支持者に愛用されてきているが、広く生活者がファッション性を感じることのなかったブランドが、今にわかにファッション価値を発信し始めている。ファッション感度が高いことで評価されている店はこぞって、「昔から変わることのない」スタイル化したものを、ファッションとしての新しさを追究するうえで必需のものとして取り上げているのである。これらのモノは価格のうえでは高い。しかし、それでも10年は着られることを考えると、十分に自分を納得させることのできる金額になるのである。より安い価格を追求している時代であるかのように思われているが、高くても長いつき合いのできるモノをという価値観が消費の面で大きな流れを作っていることを見逃せない。




 

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