ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
■ツタガワ・トレンド・リサーチについて
9.1.2006
写真を『料理』して楽しむことを提案する新業態

カメラ付き携帯電話の普及もあって、写真を撮ることが日常行為になり、そのことが撮った写真を『料理』して楽しむという新しい広がりをもたらしている。この点を念頭に置くと、イオン千葉ニュータウンSCにある「写真日和」という店は実に興味深い。ここはいわゆる写真店ではない。デジカメプリントは受け付けているが、フィルムの現像・プリントは請け負っていない。写真にまつわるモノ・コトのなかでも「写真を撮った後をどう楽しむか」をコンセプトに提案をする新業態なのである。

主要な提案のひとつになっているのがスクラップブッキングである。これは紙焼き写真によるアルバム作りを創造的に楽しむ方向で掘り下げたアメリカ発の趣味創作活動で、紙台紙に写真を自由に配しながら、カラーペーパー、ステッカー、スタンプ、リボン、旅先の思い出の品などを使って装飾的に仕上げていくものである。言わば写真と台紙を使った新しいタイプの平面的なペーパークラフトであり、小さな子供のいる若いお母さんたちを中心に、このところ女性の間で人気を広げている。この店ではこのスクラップブッキングのための様々な種類の材料や、波形などに切ることのできるハサミや、星形やテディ−ベア形にくり貫けるパンチャー、いろいろな形やサイズの枠が描けるスケールなどの道具類を揃えている。また、店内ではスクラップブッキング講座も催されている。

「写真日和」。壁にスクラップブッキングやクリッピングの見本が掲示されている。

この店で興味をそそるもうひとつの提案が、写真を部屋に飾って楽しむ手法としての「クリッピング」である。例えば、プッシュピンやステッカーを使ってコルクボードやブラックボードに写真を貼って飾る、冷蔵庫やキャビネットにマグネットやステッカーを使って写真を貼る、洗濯物干しのようなスタイルで紐にオシャレなピンチを付けて写真を挟んで飾る‥‥。専用のコーナーには、そういった飾り方をするのにふさわしい、雑貨としてのかわいらしさを持つ様々なデザインのクリップやピンチ、プッシュピン、クリップスタンド、キッチンマグネット、カードスタンド、ジェルジェム(ガラスやステンレスなどに何度も貼ることのできるジェル状のステッカー)といったものが集められている。

写真をオモチャとして、友達どうしの間でのコミュニケーションツールとして親しんできた『プリクラ育ち』の女性たちにとって、写真を素材にするスクラップブッキングやクリッピングは取り組みやすい創作活動であるし、子供をもうけることでいっそう刺激的なものになる。であればこそイオン千葉ニュータウンSCのように、小さな子供を持つファミリー層が多く住む地域に立地する商業施設にとって「写真日和」のような業態は意味のある存在となる。「写真日和」は趣味創作材料業態やステーショナリー業態のひとつと見ることもできるが、いずれにせよ、撮った写真を携帯電話の待ち受け画面にするといったことに始まる、写真を『料理』して楽しむ現代生活者の気持ちをとらえるということで、注目に値する新業態と言えよう。





 

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