ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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4.10.2007
地域の伝統的食品への興味と物産館の存在価値の高まり

ネットでのいわゆる「お取り寄せ」や百貨店での物産展が根強い人気を保っているように、地域に根ざした伝統的、伝承的な食品が食探検の刺激的テーマになっている。そんななか興味深いのが、表参道ヒルズの裏手にある「新潟館ネスパス」が1階と地下1階に開発した「食楽園」である。「新潟館ネスパス」は新潟県が展開するもので、これは昨年の12月に同館のリニューアルによってオープンしたものである。

圧巻は最奥に位置する地酒コーナーである。県内にある95の蔵元のうち、約50もの蔵元の120種の地酒が揃う。八海山などポピュラーなブランドのほか、景虎、北雪などの知る人ぞ知るブランドや、山古志の自然棚田で造られた米で仕込んだ純米吟醸なども並ぶ。このほかコシヒカリなど米は勿論のこと、ずいき(芋茎)の甘酢漬、佐渡の特産・飛び魚の焼き干など、県外では珍しい品も含めた全761品が揃う。なかには、納豆業界では知られている魚沼の「大力納豆」もあり、都内ではこれだけの品目を扱っている店はここ以外にはない。また、地下1階には、1階で物販する商品を生かした郷土料理が味わえるレストランがある。メニューも、のっぺ汁(580円)、佐渡いかの沖づけ、栃尾の油揚げ射込み揚げ(680円)、のどぐろ(赤むつ)一夜干し(1,000円)など珍しい魚の一夜干し、笹団子や丸餅入りぜんざい、地酒や大吟醸酒と、種類豊富である。

「新潟館ネスパス」の「食楽園」

「新潟館ネスパス」ではこのほかにも本格的な日本料理店「静香庵」を導入している。特色はすべて新潟の食材を使用していることにあり、越後もち豚や村上牛をはじめ、野菜、魚介、納豆なども新潟産を用いている。そして勿論、越乃寒梅、久保田、八海山といった日本酒も取り揃えられている。また、新潟色は内装にも打ち出されている。テーブルには、和ダンスの産地である加茂市の桐材を使用。店内の装飾には、金属加工で有名な燕市など県央地区のステンレスが用いられている。随所に飾られた塗りの瓢箪は高柳町の町民が農閑期に作ったものである。料理は懐石が主体で夜は一人5,800円から、昼は2,500円から。

「新潟館ネスパス」は新潟の伝統的な地域食文化をテーマにした、新しい形態の『テーマパーク』の性格を持つものになっており、食探検を楽しませる新たなスポットとして魅力を語りかけている。ちなみに、有楽町の交通会館にある「いきいき富山館」も物産を強化してリニューアルオープンしているが、既に人気のスポットになっている沖縄県物産公社の「わしたショップ」も含めて、独自の食文化を主役にする物産館は、都市生活者にとって今最も興味を刺激されるスポットと言えるだろう。スローフードへの関心とも密接な関係を持って、その土地の風土や歴史に育まれた食べ物や工芸品への興味は高まるばかりである。





 

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