ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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4.2.2012
ホットなバッグ、ケンブリッジ・サッチェルとそこに読む消費観

服よりもバッグや靴などの服飾雑貨で旬や新しい美意識を楽しみたい。ニューヨーカーもそうだが洗練されたファッション意識を持つ女性たちの間で定着した服装観である。およそモノの寿命には物性的寿命と感覚的寿命があるが、こうした服装観を持つ女性が服飾雑貨に意識するのは感覚的寿命である。新しさに価値を求めているのであるからそれは当然のことでもある。だから、比較的短いサイクルで「新しいと感じるモノ」が次々に登場し、刺激されるたびに購買意欲へと発展していく。そして今、ニューヨーカーにとって気になるホットなバッグになっているのがケンブリッジ・サッチェルである。

ちなみに、サッチェルとは学生カバンのこと。教科書などを入れて歩けるよう、頑丈でカチッとした作りになっているのが特徴で、手提げタイプ、肩掛けタイプがある。欧米では昔からその作りや外観は不変である。そのサッチェルで有名なのが英国のケンブリッジ・サッチェル・カンパニー(Cambridge Satchel)によるもので、今、同社によるサッチェルをファッション店ではニューアイテムとして打ち出しているのである。そのひとつがJクルーで、価格は170ドル。サッチェルは昔から変わらない様相をしているタイムレススタイルのバッグであり、そのことからもプレッピー・スタイル(これもタイムレススタイルである)を特色にするこの店らしさを語るアイテムと言える。

サッチェルはずばりサッチェルそのものにとどまらず、「サッチェル的」バッグという方向での広がりももたらしつつある。つまり、サッチェルにインスピレーションを得たバッグ企画であり、これは商品開発につきものの手法でもある。このインスピレーション版と取り組んでいるのがニューヨークのコムデギャルソン。ここではケンブリッジ・サッチェルとコラボレーションして独自のサッチェルを打ち出している。Jクルーのそれが伝統的なケンブリッジ・サッチェルそのものであるのに対して、コムデギャルソンのそれにはシャイニーなメタリック感覚で仕上げられたものも企画されている。このように、スタイル化しているモノを一捻りしてファッションにしており、そこにコムデギャルソンならではの創造性があると言える。

ケンブリッジ・サッチェル・バイ・コムデギャルソンは日本でも販売されており、シルバーが32,025円、ブラック(カラフルなものがサッチェルの常識になっているなかで、ブラックには意外な新しさがある)が31,185円。


サッチェルをベースにこれを一捻りするバッグがいろいろなブランドから出てくるものと考えられるが、サッチェルに読むのは「不変」に価値を見出す時代性であり、その点ではまさに今日の消費観に沿ったモノと言えるだろう。同時に、タイムレススタイルとして永続してきているモノを発掘し、探し出すことが訴求力を持つ商品開発につながることを改めて認識させられる。





 

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