ニューヨークと東京、2つの先行指標都市でトレンド発掘を続けるツタガワ・アンド・アソシエーツがお届けする、小売りに携わるマーケッターのための考察録
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2.14.2011
バレンタインデイ〜『コミュニケーション歳時』という視点での広がり

歳月を重ねるにつれバレンタインデイが歳時のひとつとして浸透してきている。この日のシンボルであるチョコレートをとっても、かつては女性から男性への「本命チョコ」と「義理チョコ」だけだったものが、ふだんお世話になっている方への「世話チョコ」、日頃のお礼の気持ちを込めた「感謝チョコ」、女性たちどうしの間での「友チョコ」、母娘・姉妹間も含めた家族の間での「ファミチョコ」、新しくは恋活中の男性の告白機会としての「逆チョコ」といった広がりを見せている。バレンタインにチョコレートを贈るという行為は、以前の男女間の愛に限定したとらえ方から、フレンドシップ、家族愛といったぐあいに、それこそ『友愛』という幅広い解釈をする方向へと広がっている。

つまり、バレンタインデイは年齢を問わず誰もが意識し、楽しめる、年間の『コミュニケーション歳時』の性格を持つようになってきていると見ることができる。軽い気持ちで夫婦愛、家族愛、友愛の表現を楽しむ日がバレンタインデイ。その点に着目すると、この日には、チョコレートや男性へのいわゆるバレンタインギフトにとどまらず、もっと商品企画のうえで可能性があるのではないか。その興味深い事例のひとつが、デパ地下を中心に展開する惣菜店の「RF1」が昨年に続いて打ち出しているバレンタイン期間限定企画の「ハート型のキッシュ」である。これはハート型を形状にしている点に視覚的特色があり、海老とブロッコリーのキッシュ(1個・368円)、ほうれん草とベーコンのキッシュ(368円)、オニオンとベーコンのキッシュ(336円)の3種類の味覚が企画されている。

ハート型キッシュには、店頭でこれを見た瞬間に、家族で囲むバレンタインデイの食卓にこんなものが並んでいるのも楽しいじゃないか、友人への手土産に持参するのもシャレているじゃないか、そんな気持ちにさせるものがある。バレンタインの象徴的モチーフであるハートを生かし、ただし単なる様相遊びの企画に終わることなく、バレンタインデイを生活歳時として楽しもうとする生活者の気持ちに語りかけるものがある。その点で今後のバレンタイン向け商品企画を考えるうえで多大なヒントを内蔵していると思うのである。

振り返ってみると、数年前から顕著になってきた「『絆』を意識する」動きは、今も継続し、今後を見通しても永続する基本潮流ととらえることができる。地球との絆、地域との絆、家族との絆、周囲の人々との絆・・・・絆を意識する対象は実に広く、それぞれへの絆意識が新たな生活行動と、それに伴う消費行動をもたらしていることは言うまでもない。そのなかで注目したいのが円滑なコミュニケーションを大切にする姿勢であり、それは何かにつけて手土産ギフトを持参する動きの浸透と広がりになってあらわれている。そしてバレンタインデイもその姿勢と重ね合わせてとらえられるようになってきているのである。こうしてみると、バレンタインデイは新たな歳時商戦としての広がりを秘めていることに気づくのである。





 

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